創作  2005年07月11日(月)に書いた ショートショート

第10話:永遠の約束

第10話:永遠の約束

「ユキエ。おれはもう、おまえ以外の女は愛せない。この気持ちは永遠に変わらないよ!」
「うれしい! 私もよ、ハジメ!」

(とんでもない約束をしてしまった……)
 ハジメは深く後悔していた。もうすぐ午前2時。霊媒師の言葉を信じるなら、ユキエがやってくる時刻だった。

 ユキエは、結婚後わずか2週間で死んでしまった。食中毒だった。悲しみに沈み、一時は自殺さえ考えたハジメを救ってくれたのは、新入社員のケイコだった。
(もう恋なんてしない。結婚なんてありえない……)
 そう思っていたが、そうではなかった。2年後、ハジメはケイコと結婚した。

 それ以来、おかしなことが起こるようになった。誰もいない部屋で声がしたり、壁に「約束」という文字が浮かび上がったり……。霊媒師の見立ては、予想したとおりだった。
「ユキエさんが、あの世から還ってこようとしています」
 ハジメは、ユキエと戦う決心をした。

 強烈な電光が、霊媒師を直撃した。
「ぐはぁ!」
 最後の霊媒師も、あっけなく倒されてしまった。7人いた霊媒師はことごとく、ユキエの攻撃に破れた。
ユキエは、めちゃめちゃ強力な霊体になっていた。

 霊媒師たちが用意した結界のフダが燃え上がる。バキバキと家が鳴って、室内なのに強風が吹き荒れる。空中に青白い光球が出現して、みるみる大きくなっていった。
「ハジメさん!」
 おびえるケイコの前に立って、ハジメは叫んだ。

「ユキエー! わかってくれーッ!
 おれは、ケイコと生きていくことにしたんだーッ!
 だからたのむ! 成仏してくれぇーッ!」

 その声に反応したのか、青白い光球は炸裂して消えた。あたりは急に静かになった。

「さ、去ったのか?」
 小さな声でハジメがいうと、背後から声がした。
「ちがうわ。還ってきたのよ、ハジメ」
 そこに立っていたのは、ケイコじゃなかった。

 目を覚ますと、もう朝だった。ケイコが心配そうな顔でのぞき込んでいる。一瞬の驚きはあったが、まちがいなくケイコだった。
「ユキエさんはもう来ないよ」
「わかるのか?」
「えぇ、私に取り憑いたとき、ユキエさんの思念が流れ込んできたの。
 ユキエさんは怒ってなかった。怨んでもいなかった。
 ただ、伝えたいことがあって、還ってきたのよ……」
「なんだ? なにを伝えたかったんだ?」

 ケイコは言いよどんでいたが、やがて、こう言った。

「あの世で、新しい恋人ができたから、約束のことは忘れてください、ですって」


(992文字)

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