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2006年 ショートショート
第18話:魔性

「どうしてママは、パパと結婚したの?」

娘のリエが訊ねてきた。いつかは話さなければと思っていたけど、今がそのときかもしれない。洗濯物をたたむ手を止めて、私は娘と向き合った。
「そのためには、ママの母さんの話をしないとね」
「おばあちゃんのこと?」
「そうよ。おばちゃんとママ、そしてリエには同じ血が流れている。だからリエも、知っておかなければならないの」

父が病死したとき、私は中学2年生だった。
悲しみに暮れていると、いろんな人物が励ましにやってきた。男の人ばっかり。そのことの意味に気づくのに、そう時間はかからなかった。母は、複数の男性と関係をもっていたのだ。

父と結婚するまでの母は、かなりのプレイガールだったらしい。
数え切れないほどの男と付き合って、その中から父を選んだ。存命中は、父ひと筋で浮気はしていなかった。その父が死んだことによって、ふたたび争奪戦がはじまったというわけだ。

(フケツよ!)
私は母さんを軽蔑した。その一方で、母さんはどんどん綺麗になっていった。そして、ちょっとした仕草、目線、言葉だけで男たちを虜にしていく。明らかに異常な世界だった。
ある日、母さんは説明してくれた。

「これは血筋のせいなのよ。
 私の母さんも、そのまた母さんも同じだった。魔性の魅力を備えていた。
 一族の女たちは、こうして最強の男を見つけてきたの」

理解できても、納得できなかった。
(そんなのヘンだよ。動物的すぎる。私は、母さんとはちがう生き方をする!)
私はそう誓った。

そんな私にも、同じ血が流れていた。気がつくと、私のまわりにも男が集まりはじめていた。払っても払っても寄ってくる。私にその気がなくても、魅了してしまうらしい。ひそかに恋心を寄せていた先輩も、例外ではなかった。
私はすべての求愛を拒絶し、心を閉ざした。

そんなある日、とある男性と知り合った。
彼は特異体質だったらしく、私の魅了が通じなかった。生まれてはじめて、ふつうの恋をした。ヤキモキして、悩んで、怖がって。長い交際期間を経て、ついに彼のハートを射止めることができた。
私たちは結婚して、リエを授かった。

すべてを語り終えて、私はひと息ついた。
「リエにもいつか、わかるときが来るわ」
賢い娘は、もう理解できたようだった。
「うん、わかったよ。
 だからパパは家にも帰らず、浮気ばっかりしてるのね!」
「そうなのよ~」
私は娘に泣きついた。


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