第33話:裸の女王様 帰りの電車で、すごいものを見ながら(見ないようにしながら)、 こんなショートショートを考えました。

2007年 ショートショート
第33話:裸の女王様

 『裸の王様』ってさ、どうしてハダカになっちゃったのかな?

 いくら王様がバカでも、いきなり透明な服は着ないと思うんだよね。つまり、いくつかの段階を踏んでから、ハダカになったと思うんだ。

 はじまりは、ちょっと変な服だったと思う。
 王様本人も「ちょっと変(派手)かな〜?」と不安だったけど、着てみたら誰も悪く言わない。なので「なぁんだ。このくらいはOKなんだ」と勘違いしちゃった。

 そりゃそうだよね。
 王様に向かって「あんたの服は変だよ〜」と言えるヤツはいない。相手が王様でなくても、面と向かって服装のことを指摘するのは難しい。

 心ある人は目を伏せて、沈黙する。
 心ない人は、(ありきたりな言葉で)服装を褒める。
 すると王様の耳には、賞賛の声しか届かない。そんな状況がつづけば、王様の判断力も麻痺してしまうよ。

 きっと王様は、服装を(きちんと)褒めてほしかったんだろうな。
 でもどんなに派手な服を着ても、一部の人は褒めてくれるが、他の人は素っ気ない。だからもっと派手な服を着るんだけど、みんな目を伏せて、服を見てくれない。
 この繰り返しの果てに、ついに透明な服に手を出しちゃったんだよ。

「なるほど、それは怖いわねぇ......」
 と彼女はうなずいた。
 興味津々に話を聞いてくれたが、意図するところは伝わらなかったようだ。

(あんたの服は露出度が高すぎるよ!)

 みんな、ごめん。説得できなかったよ。