第51話:モリアーティ 『攻殻機動隊SAC』を見てないと、意味がわからないかも。 レストレード警部がジェーンを見つけてきたのは、偶然じゃないってこと。 1,000文字の制約は、もう限界だな。 表現を削りすぎて、粗筋みたいになってしまった。 字数を増やして、短編に挑戦してみるか。
2008年 ショートショート「今回も解決できましたね、教授!」
ジェーンの賞賛に、教授は不機嫌そうにそっぽ向いた。「ふん」と鼻を鳴らすが下品さはない。すねても英国紳士だった。
「個別の事件を解決しても意味ないね。背後の大悪党を捕らえないと」
「でも、教授がいなければ数百人の犠牲者が出ていました。
そんな事件を未然に防げたのは立派です」
お世辞ではなく、心の底からそう思っているようだ。さすがの教授も照れたのか、寝返りを打って背中を見せる。ジェーンはなにも言わず、花瓶の水を取り替えに行った。
病室には私と教授だけが残った。
私はなにも言わず、ただ壁の時計をながめていた。カチコチと針が進んでいく。教授が解決した事件は、これで何件目だろう?
◎
ヨーロッパで高度な知的犯罪が頻発した。しかし捕まえていると犯人はボンクラばかり。どうやら電脳をハックされ、犯罪プログラムを実行していたようだ。私ことレストレード警部は事件を追跡し、ライヘンバッハの滝で大悪党を仕留めた。
すべては解決したかに見えた──。
しかし3年後、ふたたび類似の事件が続発する。犯罪プログラムが残っていたのだ。時限爆弾のように犯罪者が覚醒し、個別に行動しながら見事なチームプレイを成し遂げる。警察はお手上げだった。
そこで私は教授に事件捜査を依頼した。
最初はいやがっていたが、ジェーンを介護士につけると協力的になった。ジェーンが事件の核心を突くこともあり、今ではいい探偵コンビだ。
◎
「私はそろそろ会議がありますので」
「うむ、レストレード君。またな」
ジェーンはぺこりとお辞儀する。
病院の廊下を歩きながら考える。
(あの娘に本当のことは話せない。犯人はもう捕まえている。
ジェーンが介護しているモリアーティ教授こそが、犯人なんだ)
あの日、モリアーティは死ななかった。
3年後、病院のベッドで目覚めた彼は、脳核損傷のため、記憶を失っていた。自分は「引退した数学教授」だと思っているモリアーティに、私は事件の捜査協力を求めた。
つまり教授は、自分が仕掛けた犯罪を推理しているわけだ。
◎
車のエンジンをかけるとき、ふと気づいた。
(すべてが計画されたことだとしたら?)
悪の天才は、正義の天才を求めていた。
しかし名探偵のいない100年後に生まれてしまった教授は、孤独だった。そこで彼は、自分自身が探偵になることにした。
ジェーンは、ワトソン医師の子孫。
あの2人のコンビは、ホームズとワトソンのようだ。
(994文字)