創作  2008年09月23日(火)に書いた ショートショート

第52話:呪われた会社

第52話:呪われた会社

「ユミちゃん、この会社はヤバイよ!」

 幼なじみのシロウは、青ざめた顔で訴えた。
 霊感の強い人だから、なにか言うとは思っていたけど、こんなに真剣だとシャレにならない。

 ここは私が勤める証券会社。ヘッドハンティングされて3年になるかしら。
 最初はモーレツに働く社員たちに圧倒された。やっぱり一流企業は空気がちがう。その熱気にあてられ、私もバリバリ働く。すると自分でも驚くほど仕事ができた。自分の才能が引き出されていくのは快感だった。
 しかし無理がたたったのか、先週、私は職場で倒れてしまう。過労だった。
 社長命令で休暇をとらされた私は、数年ぶりに田舎に帰った。

「それは悪霊の仕業だよ」
 シロウはそう分析し、一緒に上京して確かめたいと言い出した。私に霊の匂いが残っているとか。失礼しちゃうわ。でも、気づかってくれるのはうれしかった。
 私はデート気分で承諾し、シロウを会社に連れてきたんだけど......。

「屋上だ! 屋上になにかいる!」
 手をひかれるまま、シロウと階段を登っていく。
 私、なにやってるの? これはデートじゃなかったの?

「うわぁッ!」
 屋上にあった小さな祠に触れようとしたら、シロウが吹き飛ばされた。
 大きな黒い影が私にも見えた。
 信じられないし、信じたくないけど、シロウの言うとおり、このビルには悪霊が悪霊が憑いている!

 黒い影が私たちにのしかかる。
 息ができない。シロウが死んじゃう。

「渇!」
 大きな声が闇を切り裂いた。

 おそるおそる目を開けると、修験者が立っていた。社長だった。
「さすが優秀なアナリスト。この仕組みに気づくとはね」
 私たちは社長室に寝かされていた。もう霊障は感じられない。
 社長室の壁や天井には、無数のお札が貼ってあった。

「ちゃんと制御できているから、心配ないよ」
 社長の話によると、あの祠は先々代の創業社長が建てたものらしい。
 創業当時、人を過労死させる悪霊がビルに憑いてしまった。しかし社員の潜在能力を引き出す効果があると気づいた先々代は、あえて不完全に封印した。死なない程度に社員を働かせることで、悪霊と社長の利害が一致したわけだ。これが成長の秘密だったのね。

「さて、ユミはどうする?」
 社長がにっこり微笑んだ。

「よくないよ、ユミちゃん」
 怖がるシロウを無視して、私は働きつづけた。
 高い給料も魅力だが、この会社で伸ばしたいスキルもあったから。

 大丈夫、あと2年だけ。
 ちゃんと自分を制御できているから、心配ないよ。


(998文字)

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