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[創作] 2008年10月05日(日)に書いたショートショート

第57話:保証された権利

第57話:保証された権利

「いつ、だれと結婚するかは、あたしが決めることでしょ!」

 怒鳴られて母さんはしょんぼりした。
 言いすぎたかもしれないけど、押し切るしかない。
 私は絶対にヨシユキと結婚する。

「だってリカ。母さんの話を聞きなさい」
「聞いてどうするの? もう決めたんだもん。愛し合っているんだから、いいじゃない」
「愛があるから大丈夫じゃなくて、愛しかないから不安なのよ」
 母さんはため息をついた。

 あたしは16歳。法的には結婚できる年齢だ。ただ未成年なので、親の同意を得なければならない(民法第737条)。ヨシユキは成人だし、お父さんは離婚してるので、母さんの同意があれば結婚できる。だから反対なんてさせない。

「母さんはなにが不満なの!
 あたしが若いから? ヨシユキが中年だから?」
「リカが母さんの話をぜんぜん聞かないからよ」
「そこがわからないよ。
 あたしの結婚なのに、どうして親の意見を聞かなきゃいけないの? 母さんの話をいくら聞いても、結論は変わらないわ」
 同じ話の繰り返しに、あたしはイライラしていた。

「リカが言うほど大人なら、考えてごらんなさい。
 親は子のシアワセを願ってる。リカが産まれてからずっと、そればかり考えてる。そんな親より子の直感が正しいと言うの? 将来、リカに子ができて、ちらっと見かけた相手と結婚したいと言い出したら、それを認めるの?
 この結婚がどうのじゃなくて、親の意見を聞きなさいと言ってるの」

 母さんの言いたいことはわかる。でも、自分の直感はだませない。
 あたしはヨシユキに一目惚れした。会った回数とか、交わした言葉なんて関係ない。今すぐ結婚する。それで破滅してもかまわない。

 結局、あたしは母さんを押し切って、ヨシユキと結婚した。

 あれから十年。結婚生活は、想像とは違ったけれど、おだやかに暮らすことができた。やがて娘を授かり、すこやかに育っていくのを見て、あたしは覚悟を決めた。
 あたしは娘のシアワセを願っている。それは娘の直感を信じてやること。この娘に好きな人ができたら、全力で応援する。どんな相手であっても。

 ある日、娘が宣言した。
「母さん、私、フジタカさん家の子になるわ」
「は?」
 娘はみずから養子に出ると言う。法が改正され、子の主張が最大限に尊重される現代では、子が親を選ぶ権利を有していた。
 もう決めたことだからと言って、娘は同意書を差し出した。

「な、なに言ってるの? だって、あたしは......」

 言葉が出なかった。


(994文字)

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