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[創作] 2010年07月02日(金)に書いたショートショート

第86話:邪教の村

第86話:邪教の村

「全部、私が悪いんです」

 保護された少女は、そう言って泣き崩れた。
 彼女をパトカーまで連れていって、後部座席に座らせる。まだ恐怖による興奮がひどいので、ドアは開けておいた。

 次々にパトカーや救急車、消防車がやってきて、わらわらと村に突入していく。生き残りがいればいいのだが......私が見るかぎり絶望的だ。生き残りはこの少女、リカだけだ。

 昨夜、警察に助けを求める電話が入った。
 すぐ切れてしまったので、事情はわからない。発信場所は、警察でも行くのをためらう山奥の公衆電話。どうせ若者のイタズラだろうと思ったが、署長は私に「様子を見てこい」と命令した。やれやれ。
 車を走らせ現場に着くと、そこには大量の血痕と、電話をかけてきたとおぼしき女性の死体が転がっていた。
 それが、悪夢の夜のはじまりだった。

 この地方には、古くから異端の教義が根付いている。邪教と言ってもいい。近代化によってほとんどの住民は改宗したが、この道の先にある寒村だけは、かたくなに教義を守っていた。
 いや、守るだけでなく実践していた。
 村人たちは本気で悪魔を──彼らにとっては救世主をを召還しようとしていた。何世代もかけて準備してきた儀式が決行される夜に、馬鹿な若者5人組が迷い込んだ。

「なにがあったんだい?」
 私がうながすと、リカは話しはじめた。それはB級ホラー映画そのものだった。

 ネットの掲示板で「邪教の村」があることを知ったリカは、友だちを誘ってホラードライブを企画した。渓谷を渡るところで、村から逃げてきた少女を助け、村で邪悪な儀式が行われようとしていることを知る。シャレにならない事態に友だちは帰ろうと言うが、リカは少女の父親を救うべきだと主張する。
 あれこれ議論しているところを、獣と化した村人たちに襲撃される。村人は麻薬によって、常人離れした筋力と耐久力をもっていた。パニックになった彼女は、車で村の中心部に突っ込んだ。
 そして追われて、戦って、囚われて、助け出して、犠牲になって、秘密を知って......。

 リカは生き残るため、儀式の祭壇を破壊する。絶望して襲ってくる村人たちを火炎放射器でなぎ払い、逃げる連中は車で轢き殺した。よみがえらないよう、念入りに。そして村の家々に火をつけてまわったところで夜が明けて、私に発見されたらしい。

 ふーとタバコの煙を吐いて、私は言った。

「そりゃ、あんたが全部悪いよ」


(974文字)

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