【ゆっくり文庫】夏目漱石「文鳥」 Buncho(1908) by Natsume Soseki

2013年 ゆっくり文庫 ドラマ 日本文学
【ゆっくり文庫】夏目漱石「文鳥」
005 文豪の身勝手──

文豪が知人のすすめで、文鳥を飼いはじめた。文鳥はかわいいが、世話するのはおっくう。さいわい女中が世話してくれたので、文豪はただ文鳥を愛でるだけとなった。

原作について

夏目漱石

夏目漱石
(1867-1916)

 夏目漱石の短編では「夢十夜」が好きですが、ひねくれて「文鳥」を選んでみた。子どもじみた振る舞いに、文豪の孤独が感じられる。ラストに下女と話すシーンを加えたかったけど、もやっとした感じを残すことにした。文学作品は大事なところを言わない。だから国語の問題になるのだろうか。

 主人公(夏目漱石)の振る舞いはひどいが、女中も三重吉も主人公を責めない。勝手な想像だが、主人公は叱ってもらいたかったのではないだろうか。

動画について

 脚本はすぐ書けるけど、映像にすると手間取る。文章なら「行間を読め」で住むところも、キャラクターの表情や「間」で示さなければならないからだ。なにか言いよどんだり、感情をこらえる空気を表現したいけど、正解がないからいくらでも悩めてしまう。

 映像にすると、下女とのヤリトリがおもしろくなった。原典では黙っているだけでも、映像化するといろんなことに気づく。なぜ彼女は黙ったのか、旦那はどう思ったのか。文章だけじゃ、ここまで想像できなかった。

 文鳥の声をどうするかは悩みどころだった。フリーで使える文鳥の声、文鳥の写真、イラストを探しまわったが、うまくハマらない。なんとなく妖夢の声を加工したら、ぴったりだった。最初から答えがわかっていれば、どれほど手間を軽減できただろう。まったく、もう。

 舞台がほとんど動かないので、背景に写真を敷いてみた。やっぱり写真があると雰囲気が出るね。しかし毎回用意するのは無理だろう。うん、無理だ。
 「制限された中で表現する」というテーマは、ベストを尽くさない言い訳なのか。ぐぬぬ。

 次回は田山花袋の「少女病」。すでに動画作成済み。しばらく週一本のペースでアップしていこう。

関連エントリー

2013年 ゆっくり文庫 ドラマ 日本文学
【ゆっくり文庫】森鴎外「牛鍋」

【ゆっくり文庫】森鴎外「牛鍋」

2018/01/01 - ゆっくり文庫

071 永遠に渇してゐる目── 文明開化の東京。とある牛鍋屋で、男と、女と、幼い娘が鍋を囲っていた。娘は「食べろ」と言ってもらえず、ついに箸を鍋に伸ばした。 【 ...more

【ゆっくり文庫】妄想「異説・阿部一族」

【ゆっくり文庫】妄想「異説・阿部一族」

2017/12/01 - ゆっくり文庫

069x 命より大切なものはあるか?── 観測者2名と、当事者2名が、あの事件を振り返る。阿部一族の反乱は仕組まれたものだったのか? 【ゆっくり文庫】森鴎外「異 ...more

【ゆっくり文庫】森鴎外「阿部一族」

【ゆっくり文庫】森鴎外「阿部一族」

2017/10/12 - ゆっくり文庫

069 うしろの正面だぁれ?── 肥後藩主・細川忠利が病死すると、家臣たちの殉死が相次いだ。老臣・阿部弥一右衛門は、殉死の許しを得られなかったため勤務をつづけた ...more

【ゆっくり文庫】菊池寛「父帰る」

【ゆっくり文庫】菊池寛「父帰る」

2016/10/16 - ゆっくり文庫

062 小さな家族の、小さな奇跡── 母親と長男、次男、長女が暮らす小さな家。ある夜、次男が「父親によく似た男を見かけた」という話を耳にする。 【ゆっくり文庫】 ...more

【ゆっくり文庫】芥川龍之介「羅生門」

【ゆっくり文庫】芥川龍之介「羅生門」

2015/08/02 - ゆっくり文庫

043 踏み出す勇気── 解雇され、行き場をなくした下人。盗人にするしかないが、そんな度胸はない。羅生門の上から人の気配がする。下人は正義を為すため、はしごを登 ...more

【ゆっくり文庫】菊池寛「形」

【ゆっくり文庫】菊池寛「形」

2014/08/01 - ゆっくり文庫

027 形の魔力── 中村新兵衛は槍の達人で、身につけている陣羽織と兜を見ただけで敵が恐れおののくほどだった。あるとき新兵衛は、初陣に出る若侍に陣羽織と兜を貸し ...more