【ゆっくり文庫】田山花袋「少女病」 Girl Disease (1907) by Tayama Katai
2013年 ゆっくり文庫 ドラマ 日本文学006 死に至る病──
中年になった杉田の趣味は、行き帰りの電車で少女を見守ること。決して手を出さず、あれこれ妄想にふけるだけ。杉田はどこへ行き着くのか。
原作について
田山花袋
(1872-1930)
電車にドアがなかったころの話と知らなければ、ラストは戸惑うだろう。舞台を現代に移そうと思ったが、明治39年(1906年)の様子を交えた方がおもしろいと判断し、解説パートを加えた。百年前、日本に電車が走った途端、こんな変態小説が発表されたなんて、やっぱり日本っていいなぁ。
はじめて読んだときはラストに戸惑った。しかし杉田は生活に疲れており、死にたいとボヤくなど、伏線はあった。これは事故ではなく、消極的な自殺と解釈できる。そこで、杉田がなぜ死を受け入れたのか、想像をふくらませてみた。
少女病の行く末にハッピーエンドがあるわけない。そう考えると怖くなった。
構想が固まったので、すぐ映像化できると思ったが、制作に三週間もかかってしまった。難産だった。原典からの乖離も大きい。しかしこの方がわかりやすいし、原典の精神は損ねていないと思う。
動画制作について
「文鳥」と同じく、背景に写真を敷いてみた。邪魔にならないよう、ぼかして、トーンを揃えている。背景を探すのは大変だが、あると印象がちがう。明治の風景じゃないけど、イメージカットとして容赦されたし。
キャラクターを振動させることで、電車に乗っている雰囲気を出してみた。やってみると、それなりに効果がある。こんな顔だけアニメでも、やれることは多い。
時代背景を説明するのは、動画の前か後かも迷った。先に説明したほうがイメージしやすいが、後から説明するのも悪くない気がする。これは今後もつきまとうテーマだな。
※ロゴを作ってみた
雑記
- 次は井伏鱒二の「山椒魚」にしたかったが、井伏さんが亡くなったのは1993年(満95歳没)だから、青空文庫に入るのはずうっと先だった。長すぎる保護は文化のためにならないと思うよ。
- ニコニコ動画で「ゆっくり文庫」というタグを付けてもらえた。なんだかうれしい。