【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「青い紅玉」 シャーロック・ホームズの冒険 The Adventure of the Blue Carbuncle (1892) by Arthur Conan Doyle
2013年 ゆっくり文庫 イギリス文学 ホームズ ミステリー
009 探偵を追え──
クリスマス、落とし物のガチョウの腹から宝石が出てきた。ガチョウはどこで宝石を飲み込んだのか? ホームズは現場にあった帽子を手がかりに調査をはじめた。
原作について

アーサー・コナン・ドイル
(1859-1930)
シャーロック・ホームズについては説明するまでもないだろう。冒険小説もやってみたかったので制作した。私はシャーロック・ホームズが好きで、映像化作品もけっこう見ている。
短くまとめる
ホームズ56本の短編のうち「青い紅玉」は短い方だけど、ただ読み上げると30分以上になる。ゆっくり文庫は15分前後におさめたいので、推理パートをカットした。ミステリーとしては反則だが、見せたいのはそこじゃないのだ。
またアルファ・インの聞き込みも削った。ヘンリー・ベイカー氏がホームズの意図を察するシーンを加えたことで、彼の知性が演出できた。
グラナダテレビ版は逆に尺が足りず、宝石の呪われた逸話やホーナーの事情を描いて尺を稼いでいる。時間が決まっているドラマの脚本は大変だ。
ホームズとワトソンの関係を整理する
正典のラストは鳥料理を食べておしまい。グラナダテレビ版はホーナーを助けに向かう。デビッド・バーク(声:長門裕之)のワトソンはあまり好きじゃないが、この終わり方はよかった。コヴェントガーデンや留置所に向かうまでのやりとりを、こうあるべきと思うものに差し替えた。グラナダテレビ版とも印象が変わっているだろう。
正典を読んだとき、ホームズはどうやってジェームズ・ライダーのことを伏せて宝石を返すのだろうと思った。そこを説明しようと脚本を練ったが、あまり意味がないと気づき、ホームズに「適当な説明は考えてある」と言わせるにとどめた。これで十分だった。
ところどころ、ワトソンが事件の関係者を気遣うシーンを加えた。ホームズにとっては謎解きイベントでしかないが、それぞれに人生があり、ホームズがよい影響を与えたことを、ワトソンが強調している。ホームズという天才を地上に繋ぎ止めているのはワトソンだ。
ボツ案:おまけ
20分オーバーなので削った。脚本は書いたので残しておく。
スタッフ1 | (カット! 終了です) |
スタッフ2 | (お疲れさまでしたー!) |
ワトソン | ところでホームズ、 タイトルの「青い紅玉」ってのはおかしくないか? 紅玉(ルビー)が青ければサファイアだ。 |
ホームズ | いいんだよ。 しゃれたタイトルじゃないか。 |
ワトソン | 原題は「Blue Carbuncle」だから、 近ごろは「青いガーネット」、「青い柘榴石」、 「蒼炎石」などと訳されているみたいだね。 |
ホームズ | ややこしい! いいじゃないか「青い紅玉」で。 宝石の種類はストーリーに関係ない。 |
ワトソン | でも正確に訳したほうがいいだろう? |
ホームズ | それを言ったら、 原文の「中国のアモイ川」なんて存在しないし、 「40グレインの炭素結晶」じゃダイヤモンドになる。 |
ワトソン | どっちもホームズのセリフじゃないか。 |
ホームズ | ......。 人生はままならないものだよ。 |
動画制作について
「ホームズを描くなら、鹿撃ち帽とパイプがほしい!」
しかし、いい素材が見つからない。動画制作は無理かと思ったが、なくてもなんとかなった。半眼閉じた霊夢がなんとなくホームズに見えるのは、制作者のひいき目だろうか。
ワトソンはまったく捜査に関与せず、背景のようにいるだけだが、けっこう絵になった。霊夢ホームズと魔理沙ワトソンの組み合わせはばっちりだった。シリーズ化したくなる。うずうず。
帽子が脱げるヘンリー・ベイカー氏をどうするかも懸案だったが、てんこ(比那名居天子)の帽子が着脱可能だったので解決。犯人のジェームズ・ライダーは安定のきめぇ丸。こんな役ばっかり。仲買人のこーりんもいい配役だった。常識的なキャスティングに見えるかもしれないが、製作時はけっこう悩まされる。
今回はじめて版権のある楽曲(グラナダTV版シャーロック・ホームズの冒険のテーマ)を使った。権利問題は面倒だから避けたいけど、この曲だけはどうしても使いたかった。
次回は森鴎外の「高瀬舟」をお届けする予定。