【ゆっくり文庫】菊池寛「恩讐の彼方に」 The realm beyond (1919) by Kikuchi Kan
2014年 ゆっくり文庫 ドラマ 日本文学 菊池寛014 恩讐に囚われたふたり──
江戸時代。中川実之助は父の仇である市九郎を討つべく、難所工事の現場にやってきた。市九郎は僧侶・了海と名乗り、一心不乱に岩盤を掘り続けている。市九郎は決闘を保留し、なにがあったか問うた。
原作について
菊池寛
(1888-1948)
物語としては単純明快なので、取り上げるかどうか迷っていた作品。オリジナルは了海の視点で、時系列にそって展開するが、実之助の視点に組み替えるとおもしろくなった。
罪人(=了海)が赦されるため努力するのは、まぁ、当然といえば当然の話。しかし被害者遺族(=実之助)が受け入れて赦すのも、同じくらいつらいことかもしれない。
その瞬間、実之助という人物の半生がイメージできた。三歳のときに殺された父親に、どれほどの敬意があっただろう? 没落する家で母親は、どんな呪いを息子に吹き込んだだろう? そして仇討ちのためだけに費やされた日々......。
そんな実之助が「赦す」と言う。そのシーンを描いてみたくなった。
オリジナルのラストはあっけない。これじゃ足りないが、実之助がしゃべりすぎても野暮だ。大事なことは言わず、心の整理がつく時間を与えたい。やはり「間」が難しい。動画を見て、「あぁ、実之助もつらかったんだな」と思っていただければさいわいだ。
了海の過去(茶屋の出来事、水死体の供養)はカットできるけど、かいつまんで映像化した。市九郎は善人でも悪人でもない。ふつうの男であることを強調したかった。
市九郎と実之助は合わせ鏡のようだ。罪と使命に囚われていたが、同時に越えることができた。彼方に抜けたのだ。
オリジナルの肝を残しつつ翻案できているだろうか。
動画制作について
『高瀬舟』の次に作るつもりだったけど、罪の話が連続するので『一房の葡萄』を挟んだが、これも罪の話だったのでさらに後回しした。脚本ができてから、だいぶ時間が空いてしまった。
動画制作は比較的簡単だった。後回しした分、演出が練りこまれた。「市九郎におびえる実之助」と「三郎兵衛におびえる市九郎」の対比、お弓の初回(愛らしい)と本番(悪辣)の対比は、時間が空いたからこそ思いつけた。集中して一気に作ろうとするより、ちょびちょび作る方がいいものができるようだ。総合すると、より多くの時間をかけていることになるかもしれないが。
市九郎→了海の落差を出すため、こーりんの髪と肌の色を調整した。輪郭も変えたかったが、そこまで描画できなかった。私も若いころはマンガやイラストを描いていたけど、ブランクがありすぎて手が動かない。絵を描ければ表現の幅が広がるだろうけど、制作できる動画の本数は減るだろう。悩ましいところだ。
きめぇ丸は登場回数の多いキャラクターだが、読み上げの設定はこーりんと同じだった。【ゆっくり文庫】をはじめるとき、「ゆっくりMovieMaker」の仕組みをよくわかってなかったせいだ。今回はこーりんときめぇ丸の連続登場するため、声を変えなければならない。きめぇ丸の推奨設定にしたいが、会話の尺が合わなくなったので姑息的な設定になった。まぁ、気にする人もいないかな。
やはり15分越えると、全体のテンポがわからなくなる。初めて見る人にどのくらい伝わるだろうか。
さて次回だが......ちゃんと完成できるか自信がないので伏せておく。