【ゆっくり文庫】サマセット・モーム「エドワード・バーナードの転落」 The Fall of Edward Barnard (1921) by Somerset Maugham
2014年 ゆっくり文庫 イギリス文学 ドラマ019 楽しみのため読書する──
エドワード・バーナードは裕福な家に生まれ、美しいイザベルと婚約するが、世界恐慌によって破産する。エドワードは再起を賭けタヒチに渡るが、2年を経て様子がおかしくなった。
原作について
William Somerset Maugham
(1874-1965)
サマセット・モームの短編より。舞台を現代に置き換えても通じることに驚かされる。
アメリカの大量消費社会を批判して、南国の原始的な暮らしを賛美しているが、断定しているわけではない。ベイトマンやイザベルは悪人ではないし、エドワードが怠け者であることも否定しない。価値観の違いを描いているように思える。
ベイトマンとイザベルは、エドワードを「転落(Fall)した可哀想(Poor)な人」とあわれんだが、当人は終始おだやかだった。多様な価値観を認めないアメリカ人の性質が伺える。
エドワードは無益な説得をせず、自分の名誉にこだわらず、シカゴとうまく縁を切ろうとした。こうした物腰は2年のタヒチ滞在で身についたのだろうか? 勝手な想像だが、父親の自殺が影響しているのではないか。
たとえ財産を得てシカゴに帰っても、いつか父親のように破産(自殺)するかもしれない。そうした不安がエドワードを変えたのだろう。
本作の発表は1934年だから、ウォール街大暴落(1929)の5年後であり、第二次世界大戦(1939)の5年前になる。ベイトマンとイザベル、エドワードはどんな人生を歩んだのか、想像するとおもしろい。
ジャクソンを省略
文庫本で66ページあるから、そのまま映像化すると40分くらいになる。セリフやシーンをカットして、ついにアーノルド・ジャクソンまで省いてしまった。
いなくても物語は成立するが、モームらしい登場人物を割愛することに強い抵抗があった。エビフライから尻尾を外すようなものだ。モームファンは怒るかもしれないが、簡潔に紹介することで本を手に取る人が増えるかもしれない。どうか容赦されたし。
【ゆっくり文庫】シリーズは翻案作品なので、興味をもった方はオリジナルを読んでほしい。
動画制作について
今回のミソは、「射命丸→きめぇ丸」の切り替えだ。タヒチで堕落して、肥満体型になったのではなく、ベイトマンの主観だった......という演出にした。我ながら妙案だったと思うが、どうだろう?
きめぇ丸は表情パターンが少なく、声も甲高いため、使いにくいんだけど、人気があるので準主役に抜擢してみた。
※射命丸≠きめぇ丸
エヴァはポリネシア人とのハーフだが、東方キャラに浅黒い肌はいないので、「頭が弱そう」「後ろ姿がある」という点でチルノを抜擢した。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のベンもそうだが、人種のちがいは再現できない。しかしまぁ、いい配役だったのではなかろうか。
そして今回も早苗はセックスアピールが強い女性を演じてもらった。ベイトマンを誘導するラストは圧巻だ。こーゆーの大好き。個人的に「サークルクラッシャー東風谷早苗」のイメージが定着している。
ちなみに早苗が演じたキャラは下記のとおり。いいねぇ。
No | 作品 | 役柄 |
---|---|---|
001 | 鼻 | こわっぱB |
006 | 少女病 | 千駄ヶ谷の令嬢 |
007 | 人魚姫 | アティーナ |
008 | 破られた約束 | 新妻 |
010 | 高瀬舟 | 庄兵衛の妻 |
015 | ナイト・オブ・ザ・リビングデッド | ゾンビ |
016 | ボヘミアの醜聞 | アイリーン・アドラー |
019 | エドワード・バーナードの転落 | イザベル・ロングスタブ |
更新頻度について
脚本(ストーリーの簡略化)に時間がかかってしまい、2/21に公開できなかった。広告がついてがんばりたかったけど、無理しないことにした。2/27に動画制作は終わっていたが、忙しくて金曜日に公開できなかった。やむなし。
手間と時間をかけて大作を仕上げたわけではない。いつもの1本である。あまり期待しないでほしい。
前回、小泉八雲の話をやるつもりと予告していたが、脚本が仕上がらなかったので順延した。次になにが来るか楽しみにしている人もいるようなので、次回予告はやめよう。