【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「赤毛連盟」シャーロック・ホームズの冒険より The Red-Headed League (1891) by Arthur Conan Doyle
2014年 ゆっくり文庫 イギリス文学 ホームズ ミステリー
029 つまらないミスの謎──
赤毛の質屋ウィルスンは、赤毛の男だけで結成される《赤毛連盟》の仕事で大金を稼いでいた。ところがある日突然消えてしまい、不審に思ったウィルソンはホームズに相談する。
原作について
別題:赤毛組合、赤毛同盟、赤髪組合、赤髪連盟。
シリーズ屈指の人気エピソードだが、トリックは粗い。なぜ粗いか考えたら、おもしろくなった。さらに、ワトソンが伝記を書くと決めた経緯(緋色の研究)や、犯罪者を支援する組織(最後の事件)をからめたが、見どころはホームズとワトソンの友情だろう。ホームズは昔の失敗を悔い、退屈をまぎらわすだけの人生だったが、ワトソンによって変わったのだ(妄想設定)。
伝記というフォーマット
シャーロック・ホームズの物語は、「ワトソンが発表した伝記」という体裁になっている。なので公表できない事件があることは、正典で何度も述べられている。シャーロッキアンはここに注目し、「伝記に書かれなかった真相はどうだったのか?」と妄想している。【ゆっくり文庫】の「赤毛連盟」は、「ボヘミアの醜聞」と同じく、妄想拡張版である。ちがいに興味がある方は、ぜひ青空文庫などで読み比べてほしい。
- 疑問点
- どうやってトンネルを掘ったか?
- どうやって銀行の情報を知り得たか?
- ホームズはどうやってトンネルの存在を突き止めたか?
- 想定される答え
- クレイとアーチーは実行犯で、黒幕は別にいる。
- 犯罪者の目的や、操作手法を明かせない。
- 答えを補強する
- 伝記を書く上で約束事がある。
- 全容を掴めない犯罪組織がいる。
※よく考えれば、当たり前だ。
モリアーティ教授の影
赤毛連盟の背後にモリアーティ教授がいると言うアイデアは、グラナダテレビ版ドラマにも採用されているが、その扱いはかなり安っぽい。ホームズはモリアーティをまったく恐れておらず、「名門の生まれには(悪魔的素質は)よくある」と切り捨て、クレイは「その名を口にしてはならない」とか警告しちゃう。ちがうなーって思っていた。
私の考えるモリアーティはもっと、もっと、恐ろしい。
それを【ゆっくり文庫】で表現したい。
今回はその予告編だ。
『ブルースパーティントン設計書』の次に『最後の事件』をもってくるつもりだったが、気持ちを落ち着かせるため1本、追加した。
※モリアーティとの戦いがはじまる
ワトソン視点
ワトソンがホームズの伝記に書くと決めたのは、『緋色の研究』のラストだった。『緋色の研究』そのものはおもしろくないので、ラストだけ取り出した。一部とはいえ『緋色の研究』を描けたことはうれしい。
ワトソンはホームズを賞賛したいので、その妨げになるレストレードをよく思っていない。ぶっちゃけ、かなり馬鹿にしてる。このあたりの機微も少し描けてよかった。
※ワトソンはホームズだけの手柄がほしい
動画制作について
東方キャラで、「赤毛で頭が弱く、中国と関係ある人物」と言えば、紅美鈴しかいない。実際に演じてもらうと、怖いくらいハマった。犯罪者に囲まれ、人形に同情されるシーンは、作りながら笑ってしまった。美鈴も魅力的なキャストだ。
※ねらわれた赤毛
そして犯人2名もすぐ決まった。ここに意外性はいらない。さすがに「おらおら~」&「ずらかれ~」セットを言えなかったが、いつもより出番が増えてよかった。クレイとアーチーは逮捕されたが、チンピラ×2は不滅だ。
原作のスポールディングは耳のピアス穴が特長だったが、もちろん、ゆっくりでは表現できない。なのでズバリ、頭上の人形を指摘した。ふざけているわけじゃない。本当にこうするしかないのだ。わかってくれ。
※ずらかれない!
動画制作で困ることはなかった。クリップアートも使いまわし。手抜き動画だが、私にとって大切なのは脚本だから気にしない。
ただ、モリアーティの影をどう表現するかは悩んだ。Avi-Utlの機能を使うべく勉強したが、思いとどまった。私にできる映像表現はかぎられている。そこで競っても意味がない。気持ちの制御が肝心だ。
※現場周辺図。Illustratorで作画した。
さて、来週は小泉八雲である。