【ゆっくり文庫】ボーム「オズの魔法使い」 The Wonderful Wizard of Oz (1900) by L. Frank Baum

2014年 ゆっくり文庫 アメリカ文学 ファンタジー 日本文学 映画やテレビから
【ゆっくり文庫】ボーム「オズの魔法使い」
031 素敵なことは虹の向こうに?──

カンサスの農場に住む少女ドロシーは、ある日竜巻に吸い込まれてオズの国に落着する。ドロシーはカンザスに帰る方法を求めて、エメラルド・シティに向かった。

原作について

 MGMの映画「オズの魔法使」(1939)は衝撃的だった。
 オズの国を「ドロシーの空想」と解釈し、ミス・ガルチやハンク、ヒッコリー、ジークといったキャラクターで相似関係を作った。さらにテーマ曲「Over The Rainbow」も、ドロシーのキャラクターと物語の方向性を決定づけている。素晴らしいセンスだ!

 なのでディズニーが便乗した「Return to Oz」(1986)や、前日譚「Oz the Great and Powerful」(2013)が霞んでしまった。もちろん原典は40作品におよぶ一大ファンタジーワールドだから、MGM版が異端なのはわかってる。
 でも、好きなものは好きなんだ。
 私にとってはこれがオズの真実である


※Somewhere over the rainbow

 【ゆっくり文庫】で取り上げると、2,3本くらいのシリーズになると思っていたが、思い切って整理したら101分が19分で収まった。原作や映画に等しい感動はないが、これはこれで価値があると思いたい。

参考

おうちが一番?

 MGM版のグリンダは、ぶっちゃけ善良に見えない。ドロシーと西の魔女の対立を煽り、オズ大王のところへ送り込み、すべてが片付いたところで現れ、言いくるめて故郷に帰してしまった。これは、グリンダの国盗り物語じゃないのか? そんなグリンダが言うのだから、「おうちが一番」が真実とは思えない


※グリンダは善良か?

 とはいえ、ドロシーがオズに残って女王になったとしても、幸福になれるとは思えない。無責任で薄情な国民たちにかつがれ、図々しい訪問者をあしらい、魔女の脅威に怯える。オズのように太い神経がないと生きていけない。そういう意味で、オズの国と都会は似ている。


※無責任で薄情な国民たち

 ラスト、ミス・ガルチの知り合いが昏睡から目覚めるのは、人間オズの帰還を暗示している。ドロシーと人間オズは、死の床で、同じ夢を見ていたのかもしれない。これはもちろん、私のオリジナル解釈だ。オズの国にマイナスのイメージを付けるのは気が引けるが、虹の向こうへ行くには自分を殺す覚悟が必要だろう。

東方のイメージ

 演出が、東方Projectのイメージに引っ張られることもある。4人の魔女=東方四魔女、と考えたとき、ドロシー役が魔理沙に決定した。と同時に、ドロシー(魔理沙)がつぶした東の魔女も、魔理沙になった。
 もう1人の自分と入れ替わるようにやってきた。そう思うと意味深長だ。


※四人の魔女

 そして魔理沙の帽子が、気持ちを示すアイテムになった。他人にたよりながら文句の多かったドロシーは、帽子をかぶることで積極的で寛容な女性になる。一種の変身だ。
 また帽子は、ドロシーがミス・ガルチの屋敷を訪ねていた理由だったが、帽子をもらってもミス・ガルチへの親しみは消えない。ドロシーは変わったのだ。
 魔女、帽子、ホウキ、普通の女の子。うまくハマったと思う。


※帽子なし魔理沙


※いつも悪役をやらされるアリスに、少しでもいい役を

魔法のメガネを出したかった

 原作ではエメラルドの都に入るとき、鍵のついたメガネを渡される。見えないものが見えるようになるのではなく、見えるものが見えなくなるメガネで、私はこれが大好きなんだけど、テンポが悪くなるのでなくなくカットした。
 悔しいので開発中のショットを残しておく。


※真実が見えなくなるメガネ

動画制作について

 だいぶ時間が空いたが、そのへんの事情はべつの機会に。
 今回はキャラクターを用意するのに手間取った。東方の美少女たちに、そのままカカシ、ブリキの木こり、ライオンを演じさせるのは無理がある。さりとてオリジナルで絵を描くのは避けたい。試行錯誤して、色合いと額の文字でごまかすことにした。

かかし [初号]

ブリキ男 [初号]

ライオン [初号]

 魔理沙がドロシー役に抜擢されたため、かかし役は美鈴に変更された。すると霊夢が特別になってしまうから、ブリキ男役は霖之助に交代した。キャラクターに意味があるから、神経をつかう。せっかく作ったから、キャラクターを載せておく。
 霖之助はリボンや帽子がないため、ミスティアのZUN帽を加工してかぶせた。質感的にブリキじゃなくて陶器だが、ま、いいっしょ。額の文字も反転板を用意しなかった。省ける手間は省く。顔のテクスチャは小さくて見えないからやめた。

かかし [決定稿]

ブリキ男 [決定稿]

ライオン [決定稿]

 トト役は当初、チルノを想定していたが、やっぱり人間でない方がいいので、Minecraftのオオカミにした。「鼻」の和尚、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のゾンビ声や扉、「牡丹灯籠」の亡霊など、【ゆっくり文庫】はMinecraftのアイテムがよく出る。
 トトを配置すると、目立ちすぎて困った。やむなく出番を削る。3人のお供も同じで、掛け合い漫才を減らした。でも、もうちょっと残しておけばよかったかもしれない。


※トトは目立つから、出番を減らした。

背景のこと

 今回は映画の紹介もしたかったから、スクリーンショットをふんだんに使った。映画のキャラクターもばっちり見えている。しかし使える領域は狭いため、縮小したり、位置をずらして配置した。
 【ゆっくり文庫】は右から左を見るように画面設計されている。そのため映画のシーンを左右反転させた箇所がある。たぶん映画を見なおしても気づかないだろう。


※虹の向こう側から、こっち側にもどってきた

 「オズの魔法使い」は原作も映画も長編であり、【ゆっくり文庫】に合わないと思っていた。しかしやればやれるものだ。無理と思っていたアレとかアレを、再検討しよう。

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