創作  2015年05月04日(月)に書いた ゆっくり文庫

【ゆっくり文庫】小泉八雲「雪おんな」

【ゆっくり文庫】小泉八雲「雪おんな」

あなたの知らない雪おんな──

*** コメント待ってます ***

原作について

小泉八雲

小泉八雲
(1850-1904)

 私は雪女を、妖怪の一種と考えていた。だから監視するため結婚し、子を産んで、去っていったのも、奇妙ではあるが、そういう妖怪なんだと割りきっていた。

 高校生になって、「雪おんな」の著者が外国人(小泉八雲)と知って驚く。私は雪おんなを、八雲と同じマレビトと解釈した。マレビトには理解しがたいルールがあって、そのため悲劇も起こる。怪談を聞いた子どもたちは、マレビトを思いやるようになると。

 しかし昨年、「雪おんなはどこから来たか」という論文を読んで、目から鱗が落ちた。雪おんなは子を産めずに亡くなった若い女の悪霊で、生きなおしたかったのか。日本人でありながら、日本人の「常識」を失っていた。
 この発見を伝えるべく、本作を【ゆっくり文庫】に加えることにした。

八雲による翻案

 八雲は奉公人の親子から聞いた話をそのまま書き起こしたのではなく、下記のような翻案を行っている。1つ1つが計算された演出であり、日本人の気質を深く理解していることに驚く。小泉八雲は日本人以上に日本人を理解していた。

- 草稿 翻案
主人公の名前 なし 巳之吉
(個人としての輪郭をもつ)
凍死した人物 同世代の仲間 老人
(自然死の可能性、血縁者ではない)
雪おんなの存在感 あいまい はっきり
主人公の家庭 両親は健在 父親が不在
母親の反応 なし お雪を賞賛する
(嫁として美化)
村人の反応 なし 不思議に思う
(ゆるやかな疎外感)
約束を破る瞬間 とくに描写なし 10人の子どもが眠る幸福な空間で
(落差を大きく)
雪おんなの消失 のっぽになって消える
(滑稽)
白い霞となって出て行った
(幻想的)

 被害者を老人にすることで、雪おんなの残虐性を緩和する。また血縁者でないことから、「父親を殺した女と結婚する」という倫理的問題も回避している。うまい。

 「まんが日本昔ばなし」では、「雪女」は2度制作されているが、どちらも猟師の親子だった。白馬岳の雪女伝説をモチーフにしたというより、配慮不足だろう。

 母親の存在も大きい。義母に賞賛されたことで、お雪はただの美女ではなく、良妻となった。巳之吉は母親の死後にあるはずだった孤独を、お雪と10人の子どもたちで埋めることができた。家族を大事にした八雲らしい演出である。

雪おんな
※お母さんも安心して逝けただろう

 雪おんなは巳之吉の名前を知っていた。巳之吉の家に父親がいないことも知っていた。どちらも八雲が翻案した箇所だから、意図的な演出だろう。すると雪おんなは、たまたま遭遇した美少年を見初めたのではなく、以前からお気に入りだった少年だったから、助けたのかもしれない。
 そんな彼女が「お雪」となって、街道で巳之吉を待っていたときは、どんな気持ちだっただろう? 着飾って、素知らぬ顔をして、でも内心ではちゃんと出会って、恋して、結ばれることを願っている......。なんといじらしいことか。

 「和解」の前妻もそうだが、八雲が描く日本人女性は寡黙すぎる。自分の哀しみを決して口にしない。その胸中を察すると切なくなる。

雪おんな
※お雪は江戸に向かう途中で死に、供養されず、悪霊になったのだろう

【ゆっくり文庫】の翻案

 だれもが知ってるストーリーだから、先にネタバレ解説する異例の構成になった。予備知識がないと雪おんなの気持ちを汲み取れない。必要最低限に抑えたつもりだが、まだ情報が多かったかもしれない。コントロールが難しい。

雪おんな
※物語を見る目が変わっただろうか?

 ストーリー本編はほぼそのままだが、言い回しは簡略化している。お雪が身の上を語るところ、子どもの幸福を願うところは強調した。もっと多くを語らせたかったが、ぐぐっとこらえた。察してほしい。

 「じつに白かった」という言い回しは奇妙だが、そのまま残した。「じつに美しかった」では風情がない。

雪おんな
※頬が赤らむだけで印象が変わる

 表記は「雪女」が一般的だが、固いし、妖怪のイメージが強いので、「雪おんな」にした。

配役

 東方Projectの雪おんなといえばレティ・ホワイトロックだが、キャラクターを増やしたくない。八雲作品なので魔理沙と思っていたが、「和解」のイメージに引っ張られる。
 よって、雪おんな=チルノ、巳之吉=きめぇ丸とした。【ゆっくり文庫】のチルノは幸薄い役が多くて、本当に申し訳ない。きめぇ丸はぜんぜん美少年じゃないが、「雪おんなにとって好みの相手」であればいい。きめぇ丸がチルノを「美しい」と思うのも同じ。美男美女でないところが逆にいい。

雪おんな
※当人同士の主観です

 10人の子どもたちは、東方Projectの妖精・妖怪(ルーミア、大妖精、リリー・ホワイト、ルナサ、メルラン、リリカ、ミスティア、スターサファイア、ルナチャイルド、サニーミルク)を配役したが、やはりキャラクターを増やしたくなかったので、文庫劇団(紫、レミリア、パチュリー、フランドール、アリス、霖之助、妖夢、早苗、魔理沙、霊夢)に変更した。人間と妖怪がほどよくミックスされ、チルノのきめぇ夫婦が劇団の親みたいな雰囲気になった。

 劇団は15人だから、母親(幽々子)と村人たち(咲夜、美鈴)で打ち止め。茂作爺さんが足りない。子どもたちに橙を含め、紫を割り当ててみたが、幽々子と夫婦のようなイメージになるのは困る。茂作は他人でないといけないから、なじみの薄い藍を配役した。藍がしゃべるのは本作が初めてだ。


※凍結モード:配役が変わるたび作りなおした

チルノの状態変化

 なるったけ手抜きしたいが、「雪おんな」と「お雪」の見た目は変えたい。氷の羽のある/なしじゃ弱いから、リボンを取って、髪飾りをつけたり、髪の色を変えたら、チルノでなくなった。これはまずい。
 その後、「嫁になる前」と「嫁になった後」の変化も欲しくなる。「後」はきめぇ丸の頭巾バージョンだが、「かわいい女」や「グスコーブドリ」とちがって羽がない。「嫁になる前」は精一杯のおしゃれとして、髪飾りを復活させた。

雪おんな
※採用された4つ

雪おんな
※試行錯誤

雪おんな
※きめぇ丸の新パターン

動画制作について

 やはり解説パートが難しい。見せるものがないところは、本当にない。最終的にカットしちゃうから、私が削ったところはだれも知らないまま。悲しい。もったいない。

 「雪おんなが覆いかぶさって白い息を吹きかけるところ」や「凍りついた茂作の発見」など、こまごま悩んだところはあるが、まぁ、解決できた。

 私は動画を11分とか14分などの、キリのいい数字で揃えているが、この制限がきつくなった。今回も9秒を埋めるため一週間近く悩んでしまった。音楽との同期も難しい。脚本より時間調整に苦しむようになった。
 制約によってクオリティが高まっているのかどうか、自分ではわからない。

雑記

 「酒虫」の季節が夏だったので、先に冬の話を投稿しようと思った。短いから簡単に終わると思っていたが、べらぼうに時間がかかった。季節感なんか意識するんじゃなかった。
 せっかくなので、「酒虫」と同時公開をやってみる。

 予定では、「雪おんな」はもっとあとで投稿するはずだった。なのでまだ作ってない「お貞の話」に触れてしまっている。「雪おんな」で八雲の怪談を総括しようと思っていたが、ま、いっか。

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