創作  2016年01月01日(金)に書いた ゆっくり文庫

【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「踊る人形」シャーロック・ホームズの帰還

【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「踊る人形」シャーロック・ホームズの帰還

解ける暗号、解けない暗号──

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原作について

アーサー・コナン・ドイル

アーサー・コナン・ドイル
(1859-1930)

 「踊る人形」は世界でもっとも有名な暗号である。私も本作を読んでいなければ、ゼントラン文字やグロンギ語に興奮することはなかっただろう。暗号は少年のロマンであり、本作はその源流といえる。世界におよぼした影響は計り知れない。

 しかし原作に忠実なグラナダTV版でも、暗号解読シーンはカットされてしまった。絵的に単調だから仕方ないが、推理を省いて犯人を言い当てるようで釈然としない。よって、【ゆっくり文庫】で挑戦したい。

グラナダTV版「踊る人形」
※グラナダTV版「S1E2 The Dancing Men」1984/05/01放送

 グラナダTV版では馬丁が不審だったり、ヒルトン氏が踊る人形の幻覚に悩まされる演出を加えているが、あまり噛み合ってない。疑惑を向けるなら、エルシーだろう。それから原作にない、ホームズが使用人に夫人の無実を伝えるシーンがあった。軽く流されちゃったけど、重要なことだと気づいた。

もう1つの暗号

 作ってみると、「踊る人形」を解読するだけでは悲劇を食い止められなかったことがわかる。ヒルトンが約束にこだわらなければ、エルシーが過去を隠そうとしなければ......。結婚したばかりで、一心同体の夫婦になる猶予がなかったことが悔やまれる

「どんな問題も解明されれば簡単に思えるもの」

 暗号に惑わされず、ヒルトンとエルシーが話しあえばよかった。
 やるせない物語だった。

翻案について

 初号は40分をオーバーしたので、不要なシーンを刈り込んだ。キュービット氏の来訪を1回にして、話を簡潔した。冒頭の「金鉱への投資話」は本作全体にかかるテーマを述べているので残した。北ウォルシャム駅で駅長(グラナダTV版では馭者)と話すシーンも好きだが、情報の拡散は後半の展開と噛み合わなかったので省いた。

【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「踊る人形」
※本作のテーマ

暗号解読にみる知性の差

 暗号解読の思考過程を描くため、ホームズとワトソンが協力して取り組むことにする。このときワトソンの賢すぎず、愚かすぎないよう、注意した。ホームズが道を示し、ワトソンが歩を進めていく。ワトソンは驚かされてばっかりだが、いろいろ気づくし、解読法を説明できるほど理解力がある。ちょうどいい知性になったと思う。

【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「踊る人形」
※解読法は難しくないが、「解ける」と思わなければ解けない

アリスという目眩まし

 物語に緊迫感を与えるため、エルシー役にアリスを抜擢した。【ゆっくり文庫】の視聴者はアリス=悪役と思い込んでいるから、反射的に疑ってしまうだろう。正典を読んだ人も、「ひょっとしたら悪人に翻案されているかも?」と惑わされるかもしれない。
 案の定、アリスを疑うコメントがすぐ入った。そういう先入観があるからエルシーは過去を隠したんだぞ。疑った人は猛省するように!

【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「踊る人形」
※ギャングの娘と知られたら、愛を失ってしまう!

 エルシーがアリスなら、スレイニーは妖夢だ。妖夢は「羅生門」で暗黒面に堕ち、アリスは「踊る人形」で運命から逃れられなかった。こうして見ると、悪人にも同情すべき点がある。「罪を憎んで人を憎まず」とはよく言ったものだ。

ワトソンの活躍

 ホームズが見落としたものを強調するため、キュービット家の使用人たちが戸惑うシーンを追加した。
 使用人たちは主人が殺され、夫人に容疑がかかったことに困惑していた。マードック警部が「踊る人形」を知らなかったのは、使用人たちが伏せておいたからだ。彼らはホームズの推理を聞いても警戒していたので、ワトソンが「自分たちは味方だ」と諭した。
 我ながら、いいシーンになったと思う。

【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「踊る人形」
※使用人たちは困惑していた

 正典のマードック警部もホームズに協力的だが、【ゆっくり文庫】はさらに強調した。マードック警部はホームズの推理にいちいち賞賛するが、ホームズは浮かれない。マードック警部はワトソンのように、関係者の心情に気を配らないし、探偵の気持ちも汲み取らない。ホームズは賞賛を求めるが、だれの賞賛でもいいわけじゃない。ほんとうに、いいコンビだと思う。

【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「踊る人形」
※マードック警部の賞賛を、ホームズは聞き流す

余談

 ホームズはエイブ・スレイニーの情報をるため、ニューヨーク警察のウィルスン・ハーグリーヴに連絡した。ホームズがニューヨーク警察の人間といつ知り合ったのか、疑問に思うシャーロキアンもいるだろうが、アメリカ生まれのアイリーンを仲介すれば納得できる。

 え? そんなこと気にしてる人はいない?
 ですよねー。

プロトタイプ:ワトソンとメアリーの事件

 いちばん最初に書いた脚本は、キュービット夫妻をワトソン夫妻に置き換えたものだった。
 「最後の事件」のあと、ワトソンと妻メアリーはノーフォークに引っ越して、静かに暮らしていた。あるときワトソンは家の壁に「踊る人形」を見かけ、ハドソンさんに相談の手紙を書く。それが転送されてホームズとアイリーンが帰国するが、メアリーは死亡し、ワトソンは重体の上、妻殺しの容疑をかけられていた。
 「空き家の冒険」をスルーしてホームズを復活させる妙案だと、当時は思っていた。まぁ、メアリーはホームズも認める賢い女性だから不自然になる。よって没にした。

動画制作について

 本作が完成したのは5月で、「空き家の冒険」より前だ。ジト目の妖夢はここが初出で、その後、W.W.ジェイコブズ「猿の手」のエドワードに流用されている。この半年、自分が事故で死んだら動画を投稿できないと不安だった。

 手こずったのはもちろん「踊る人形」の図案化。最初はシドニー・パジェットの挿絵を切り抜いたが、使いにくいのでIllustratorで自作した。ついでに全文字制作した。正典にないアルファベットもシャーロキアンが補完しているのだ。下記サイトを参考になった。

【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「踊る人形」
※ゆっくり文庫「踊る人形」

【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「踊る人形」
※答え合わせ

雑談

 番外編を挟んでホームズを復活させるつもりだったが、脚本が遅々として進まず、年末年始スペシャルとして公開することにした。「空き家の冒険」はオリジナル要素が強かったから、原作に忠実な「踊る人形」でバランスをとりたい。
 しかし「空き家の冒険」でポイントを使い果たしてしまったのが、「踊る人形」に広告がつかなかった。年末年始で忙しく、落ち着いて見られなかったというツイートもあった。
 あと2本公開するつもりだったが、しばらく間隔を開けよう。

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