【ゆっくり文庫】日本の民話「キジも鳴かずば」 Kiji Mo Nakazuba by The Old Tales of Japan

2019年 ゆっくり文庫 ファンタジー 日本の民話 日本文学
【ゆっくり文庫】日本の民話「キジも鳴かずば」
086 再話による訴え──

犀川のほとりの小さな村に、お菊という少女が住んでいた。お菊は病気をわずらうが、父が炊いたあずきまんまで回復した。お菊はうれしさのあまり、「あずきまんま食べた」と手毬唄を歌った。すると...

第一版:2019/12/20

第二版:2020/01/25

原拠について

『雉子も鳴かずば』の像

『雉子も鳴かずば』の像

 私がこの民話を知ったのは「まんが日本昔ばなし」から。口をきかなくなった娘のイメージが強烈だった。
 大人になってDVDを見返すと、村人たちの身勝手さに憤った
 彼らは同胞である弥平を罪人として殺害し、その恩恵を享受しながら、遺児(お菊)の世話を放棄したのである。なんたる無責任、なんたる怠惰、なんたる不作為! しかもお菊が口をつぐんだのはショックとか当てつけではなく、新たな犠牲者を出さないためだった。

 お菊を幸せにしてやりたい

 そんなことを考えて動画化を検討した。

人柱伝説 - 「ありそう」と「あった」は異なる

 あらためて人柱伝説について調べてみたら、物証がちっともないことに驚いた。人柱の風習が古代から近代まで続き、全国各地に伝承地があるなら、なんらかの物証があって然るべきだ。

 生埋めの事件や事故はあっただろう。しかし「風習」というくらいなら、儀式の手順や祭具、実施の記録があるはず。人柱候補者を捕まえた、逃げた、遺族が乗り込んできた、あるいは遺族が人柱を誇って語り継ぐと言った余波があるはず。それがない。なぜないのか? そんな「風習」はなかったのではないか?

 とはいえ、「ない」ことは証明できない

 夢枕獏の小説「闇狩り師 崑崙の王」に人柱の専門家が登場するが、ああいうのを読むと、「やっぱりあったのでは?」と思ってしまうよねぇ。

人柱ってなんだ?

 そもそも人柱の定義がなかった。「建造物に霊的な加護を与えるため、人間を生きたまま埋めること」と理解しているが、該当しない伝説も多い。

  • 弟橘媛(オトタチバナヒメ)は建造物に身を捧げたわけじゃないが、身代わりに立ったという意味で人柱とみなされる《当人の意志》。
  • 生き埋めではなく、事故死、病死、自殺、行旅死亡人の死体であっても、建造物に霊的な加護を与えることを念頭に埋葬すれば、人柱とみなせる《他者の意志》。
  • トンネル工事の最中に作業員が生き埋めになっただけでも、のちに「人柱だった」とうわさが定着すれば、これまた人柱とみなせる《世間の認識》。

 ぶっちゃけ、だれも死んでおらず、なんの儀式も行われてなかったとしても、「人柱が立った」と認識されれば、それは霊的に人柱とみなせるのではないか? とさえ思う。

 人柱の犠牲者が「いた」か「いなかった」かで言えば、「いた」だろう。物証ある史跡が見つかるかもしれない。しかしそれは個別の事件・事故であって、風習ではない。
 「全国各地で古代から近代まで続いた風習」が、まったく痕跡を残さないわけがないのだ。

キジ、娘(妻)、口は災いの元、を含む人柱伝説

 キジ、娘(妻)、口は災いの元、を含む人柱伝説を調べると、大きく長野県(久米路橋)と、大阪府(長柄橋)の2箇所で見つかった。だいぶ離れている。

長野県・久米路橋と大阪府・長柄橋
※長野県・久米路橋と大阪府・長柄橋

 初出で並べると、下記のように変化したと推測できる。

  • (1)「神道集」に長柄橋の伝説が記録される。
  • 久米路橋に伝わって、(2)(3)に再話される。遺族がクローズアップされる。
  • (4)「キジも鳴かずば」として放送され、全国的知名度を得る。
  • 長良橋へ逆輸入され、(5)(6)のハッピーエンドに再話される。
  • (7)悲劇性を抑えてリメイクされる。
キジ、娘(妻)、口は災いの元、を含む人柱伝説
  1.橋姫明神事 5.長柄橋址と人柱の説話 6.雉子畷碑
初出 13世紀 1973-4年 1981年
収録 「神道集」38 「大阪の史跡を訪ねて 2 中世篇」 -
場所 大阪府・長柄橋 大阪府・吹出市
(活躍なし) (名前不明) (名前不明)
(不明) 巌氏 岩氏
(不明) (登場せず) (登場せず)
原因 男が口にした人柱の条件に、男自身が合致した。 自分で申し出た。
キジ 橋奉行らが、雉の鳴声を聞きながら相談していた。 夫がキジを弓で射止めたのを見て、「ものいわじ父は長柄の人柱 鳴かずば雉も射られざらまし」と詠んだ。
結末 妻は「ものいへば父はながらの橋柱 なかずば雉もとらえざらまし」と詠んで、淀川に身を投じた。 娘は歌を詠んだ機にしゃべれるようになり、以降は夫と仲良く暮らした。
備考 妻が身を投げたあと、娘の消息不明。 飛鳥時代の出来事と語られる。 キジを射た場所が垂水(現在の吹田市付近)であることにちなみに、住宅街に石碑が立てられている。
キジ、娘(妻)、口は災いの元、を含む人柱伝説
  2.水内橋 3.おしになった娘 4.キジも鳴かずば 7.もの言わぬお菊
収録 日本伝説叢書 信濃の巻 信濃の民話 まんが日本昔ばなし #0055 まんが日本昔ばなし #1359
初出 1917年 1957年 1976年 1992年
場所 長野県・久米路橋(水内橋)
お菊 もりい 千代 お菊
(不明) 五作 弥平 仁兵衛
存命 おてい(故人) (故人) 存命
原因 盗み 盗み 娘の病気を癒すため、小豆と米を盗んだ。
キジ 娘が猟師に撃たれたキジを憐れみ、「雉も鳴かずば撃たれまい」とつぶやく。
結末 娘は一生口をきかなかった。 - 娘は失踪した。 娘は一生口をきかなかった。
備考 父が人柱になったあと、母が娘を育てている。 - 出展の記載なし。 信州の伝説(角川書店刊)より

新しい再話ほどマイナス要素が多い

 人柱伝説には、「人柱によって建造物が堅牢になった」とするプラス要素と、「人柱によって悲劇や祟りが生じた」というマイナス要素がある。再話された時代が下るにつれ、マイナス要素が強まっている。新しい伝承(都市伝説など)の人柱は、幽霊や祟りをもたらす原因である。かたや中世の人柱は美談であり、さまざまな恩恵があったと伝えられる。

 伝説とは、事実をもとにしたフィクションである。フィクションには人間の意志が介在する。プラス効果が期待される人柱伝説に、なぜマイナス要素を加えていったのか?

 人柱の風習をやめてもらうため、悲劇や祟りを織り交ぜ再話したのではなかろうか?

 「キジも鳴かずば」(久米路橋)、「百万一心」(吉田郡山城)、「人柱にされた娘」(松江城:小泉八雲)などの民話を聞いていたら、領主も人柱を躊躇するだろう。なぜなら人柱を立てることで、建造物に霊的な加護が加わるどころか、恨みや呪いを引き起こしてしまうからだ。人柱の迷信を信じるなら、祟りも信じるだろう
 工事技術の発達に伴い、人柱のプラス効果を期待しなくなる。すると人柱伝説はマイナスの再話が増え、悪しき風習と批判されていく。そう考えるとスジが通る。

 この仮説を立証する論文を探したが、見つからない。個人的に研究するノウハウもない。そこで「うp主の考察」と断りを入れて、動画化することにした。専門家から見たらトンチンカンな考察かもしれないが、ご容赦されたし。

先行作品

 先行作品、および思い出の作品を紹介する。ネタバレを含むので、未読の方はご注意ください。

「火の鳥ヤマト編」
※殉死の風習をやめさせようとするヤマトタケル(オグナ)

「火の鳥ヤマト編」
※あえなく生き埋めに。

「火の鳥ヤマト編」
※殉死者たちは抗議の歌を歌う。

「火の鳥ヤマト編」
※力尽きる。

 古墳時代。ヤマト国の王子・ヤマトオグナは、父に命じられクマソ国の酋長川上タケルを暗殺した。しかし父がまちがっていたことを知ったオグナは、父や兄たちと対立。父が亡くなると、殉死者として始末されることになった。オグナを追ってきたタケルの妹・カジカも囚われ、ふたりは生き埋めにされた。
 ところが殉死者たちは火の鳥の血を舐めていたため、地中でも死なず、一年にわたって抗議の歌を歌いつづけた。血の効力が切れると殉死者たちは死に絶え、墓は静かになった。


 人柱伝説を調べる時、たびたび「火の鳥ヤマト編」のことを思い出した。手塚治虫の漫画は説得力があって、歴史の教科書より鮮明に思い出せる。学術的な誤謬もあるが、歴史に興味を持つキッカケになる。
 1987年にOVA化されたが、歴史解説が省かれたため、のっぺりした印象だった。

 『日本書紀』によれば、倭彦命が亡くなった時、側近たちが墓の周辺に生き埋めにされたが、数日間も死なずに昼夜呻き続けた。これを哀れんだ天皇は殉死の禁令を出し、野見宿禰が考案した埴輪(はにわ)を殉死者の代わりとする習慣が生まれたという。
 つまり古墳時代すでに生き埋めによる殉死は忌避され、廃止されていた。殉死は忠誠心の発露として復権するが、名誉のない人柱が同じように復権だろうか?

キジも鳴かずば まんが日本昔ばなし
※貧しい親子、娘の願い事、盗み

キジも鳴かずば まんが日本昔ばなし
※地主様の決定、人柱、泣きはらす娘

キジも鳴かずば まんが日本昔ばなし
※猟師がキジを撃つ、去っていく娘

 伝承との差異は前述した通り。「娘は母親を思い出して、あずきまんま食べたいと言った」「そのため父は小豆とコメを盗んだ」という流れがせつない。成長した千代の白い顔が脳裏に焼き付く。
 断言してもいい。藤田和日郎先生はこのエピソードを見ている。

カムイ外伝「舞様」
※人柱になる代わりに、不自由ない生活を保証される舞様。

カムイ外伝「舞様」
※オソロシの滝が止まると、近く洪水が起こる。村人たちは舞様との別れを嘆く。

カムイ外伝「舞様」
※カムイは科学的な対策を立てるが、舞様の決意は変わらなかった。

カムイ外伝「舞様」
※人柱の儀式。次代の舞様が一部始終を見守る。

 岩津領は、十数年ごとに起こる水害に悩まされていた。十年ごとに必要になる人柱を得るため、身寄りのない娘を人柱候補として育てることにした。娘は「舞様」と呼ばれ、隔絶された鳴滝村で世話される。引き換えに村は年貢を免除される。村人たちは舞様を敬愛し、自分たちが飢えても舞様を飢えさせることはなかった。

 2年前、追手との戦いに傷ついたカムイは、舞様に助けられた。水害の予兆が起こり、人柱になる決意を示す舞様。カムイは実力で逃がそうとするが拒否される。つづいて科学的な見地から解決策を示すが、舞様の決意を変えることはできなかった。

 現在、新しい舞様が村人たちに世話されている。カムイは介入せず、去っていった。


 継続的に人柱を排出する仕組みがおもしろい。隔絶され、狂人が多い鳴滝村は、人柱候補を世話するのに絶好の環境だ。よく考えられている。
 物語の主軸は人柱の是非ではなく、死に方を決めた人を説得できるかどうかにある。生き残ることのみを追求するカムイとの対比は見事だった。

もの言わぬお菊
※無言の抵抗か。

 「#0055 キジも鳴かずば」の16年後に作られたリメイク。父親はひとすくいの小豆を盗んだが、領主によって一俵盗んだことにされ、そのまま人柱にされてしまう。残された母親の苦労もつらい。
 「#0055 キジも鳴かずば」より悲劇性が強調されているが、あまりショックを受けない。母やお菊の悲しみを、密告した役人や無能な領主への怒りに転換できるから。「#0055 キジも鳴かずば」には明瞭な悪人がおらず、娘は怒りや悲しみを超えた彼方にいた。ひたすら虚無。
 悲劇性を高めたほうがマイルドってのは奇妙だ。

月光条例「雉も鳴かずば」
※貧しいながらも純真なお菊

月光条例「雉も鳴かずば」
※しっかり地名が出てくる

月光条例「雉も鳴かずば」
※口伝のため、作者がいない

月光条例「雉も鳴かずば」
※やはりこのシーンに集約される

 お伽噺世界の異変に立ち向かう「月光条例」シリーズの1つ。
 チルチル(メーテルリンク「青い鳥」の主人公)は、「雉も鳴かずば」の世界に迷い込み、お菊の一家と知り合う。やがて弥平が人柱に選ばれてしまい、チルチルは作者を探して結末を書き換えてもらおうとする。しかし民話に特定の作者はおらず、悲劇を食い止められなかった。

 「長柄の人柱」が再話されたことなども紹介しているが、解説パートは主体ではなく、「作者が万能ではない」というメッセージが描かれている。
 藤田先生らしく、キジを抱いた少女は痛切。

コメンタリー

 あれこれ述べてきたが、【ゆっくり文庫】は民話の研究解説ではない。お菊を幸せにするために再話するのだ。よって「まんが日本昔ばなし」を下敷きとした。また「日本伝説叢書」に準じ、娘の名前はお菊とする。「番町皿屋敷」を連想させてしまうが、やむなし。親子の配役は、きめぇ丸×チルノ。文庫劇団では定番に思えるが、親子は初だったと思う。チルノは妻じゃないから、兜巾をつけてない。

身近な人柱伝説

 冒頭に「江戸城伏見櫓で見つかった人柱?」のエピソードを挿入し、人柱がどういうものだったか説明する。人柱を知らない人がいるかもしれない。私は「人柱の風習があったとは思えない」という立場だが、「そういうことがあったかもしれない」と思ってもらわないと物語が成立しない

 見つかった人骨は直立しておらず、状態も乱雑だった。専門家の調査で人柱ではないと発表されたが、いっぺん広まったオカルトは消えない。「皇居で人柱が見つかった」という話は語り継がれ、さまざまな媒体に引用された。否定する情報があり、肯定する情報がないにもかかわらず、「宮内庁が隠蔽した」といった尾ひれがついて定着した。

 かようにオカルトの払拭は難しい。この事例をみれば、日本人の精神に深く根付いた「人柱伝説」の検証がいかに困難か、想像いただけるだろう。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※咲夜のツッコミパンチ

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※投げナイフは見送った。

弥平の家

 手毬唄はどうしよう? ゆっくりボイスを調教するのは大変なので、ナレーションを重ねてごまかした。ちなみに手毬はYMMのキャラクターで、アクションで弾んでいる。私はとことんAviUtlを使わないのだ。

 貧しい父と娘。病気の娘のため、ひとすくいの小豆と米を盗む──。
 典型的な設定と展開だけど、やはり胸を打つ。あずきまんまが、亡き母の思い出につながっているのも悲しい。
 振り返ると、娘が「あずきまんま食べたい」と言ったことが悲劇の原因になっている。口は災いの元。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※弾む手毬もYMMのキャラクター。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※濡れタオルの試作:氷嚢、冷えピタは絞れなかった。

庄屋の屋敷

 ここから番頭(さくや)と奉公人(めーりん)の視点。奉公人は「いい人」に見えるが、なにも行動してないから、「ふつうの人」である。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※奉公人のうっかり発言も悲劇の元凶だ。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※番役アリス

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※チンピラコンビも考えたが、シリアスな状況だから見合わせた。

猟師は事情を知らない

 猟師は「娘の言葉を聞いただけの他人」でしかないが、のちのちの展開のため「娘の夫」にした。これで雉撃ちに現場に居合わせてもおかしくない。猟師は変わり者で、妻・お菊の事情を知らなかったようだ。だから唖然として、去りゆく妻を追いかけなかった。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※猟師は事情を知らない。

解説パート

 人柱伝説について、私が調べたことをまとめる。専門家じゃないから、調査や表現におかしな点があるかもしれないが、やむなし。
 本で読んだ知識をまとめるのに比べ、私見を述べるのはきついね。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※解説は目的じゃないが・・・

その先へ

 そして「Cパート」。この「Cパート」のため、本編や解説パートはあった。
 猟師はお菊を追って、見つけ、寄り添うことができた。そのプロットは当初からあったが、しあわせになったことを明瞭に示したい。いろいろ考え、「あずきまんまと3つの茶碗」を思いついた。

 想像してほしい──。

 「あずきまんま食べたい」と口走ったせいで、父・弥平は死んだ。そのあずきまんまを、お菊が、家族といっしょに食べる。自分を責め続けた過去を、お菊は克服できたのだ。
 変わり者の猟師だから成し遂げられたことと思う。お菊の気持ちを考え、猟師も生まれ育った村に近寄らなかったのかもしれない。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※お菊が、あずきまんまを食べることの意味を、考えてほしい。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※この世でもっともおいしいものを

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※ふたたび家族で!

雑記

 動画そのものは一年くらい前に完成したんだけど、解説パートに自信がなくって死蔵していた。しかし調査は進展せず、解説が目的じゃないから、公開することにした。間違いを指摘されたら「ごめんなさい」と言おう。

めーりんはあなた

 投稿前に、めーりんの立ち位置に悩んだ。
 彼が不用意なこと言ったせいで、弥平が人柱に選ばれてしまったように見える。お菊のことを案じながら、具体的な行動を起こさなかった彼に、ヘイトが向くかもしれない。
 しかし、彼になにができただろう? めーりんを批判する人は、よっぽど公明正大に生きているんだろうな。コメントで喧嘩してほしくないが、引っかかるものがあってこその昔ばなしかもしれない。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※めーりんは善良で無力で無名の村人だ。

令和元年台風第19号

 投稿しようとした矢先、令和元年台風第19号が猛威を奮った。10月13日、千曲川が決壊した。犀川が千曲川に流れ込むところのやや下流だ。
 まぁ、気にすることじゃないかもしれないが、水害の真っ最中に水害の動画をあげるのはよくないと思い、しばらく寝かせることにした。

ゆっくり文庫「雉も鳴かずば」
※時事通信(浸水した長野市周辺)

新たな迷信

 100年にわたる治水工事によって、千曲川・犀川の水害はだいぶ減ったが、完全に克服されたわけじゃない。日本の気候は亜熱帯化しているので、新たな水害も起こるだろう。ところが水害が減ったことで、「水害なんて起こらない」と軽んじられるようになった

 民主党政権時に「スーパー堤防」の仕分けや、多摩川氾濫の背景に「堤防あると景観楽しめない」という住民の反対運動があったことは、記憶に新しい。科学的根拠が乏しい点では、新たな迷信と言えるかもしれない。

 だから治水工事は正しく、じゃぶじゃぶ税金を注ぎ込んでいいってわけじゃない。難しいとは思うが、科学的に判断してほしい。「21世紀の人間は馬鹿だった」と笑われないように。


 久しぶりの新作なのに、短くて、悲しい話ですまんな。

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