取り壊されるアパート
2007年 東京都:西部 日常近所にあるアパートが取り壊される現場に遭遇した。
鋼鉄の重機が、がりがりと建物を削り落としていく。
すでに2階部分は崩れ落ち、アパートの内部が見て取れた。巨大なドールハウスを見ているような感じだった。
このあいだペンキを塗り替えたばかりなのに
古いアパートだった。
たしか半年ほど前、外装のペンキを塗り替えたばかりだったはず。見た目を変えたくらいじゃ、新しい店子が見つからなかったのだろうか。結局、取り壊してしまうんじゃ、ペンキの塗り替えは無駄だったね。
※豪快に削ってる
壊すのも大変
階段の手すりが引きちぎられた。埃が立たないよう、水がまかれている。重機が届かない屋上では、作業員がバーナーで手すりを解体していた。大きな音が響き、バーナーの火花が舞い落ちる。
道行く人たちが立ち止まり、へぇと嘆息しては、また歩き去っていく。
※ガリガリガリ...
注意して見てたわけじゃないから、ここに何世帯が住んでいたかなんて知らない。取り壊しているのだから、いつの間にか無人になっていたんだな。
無人になったから取り壊しているのか、取り壊すために無人にしたのか。
新しいアパートを建てるのか、更地にするのか。
これまでなにがあって、これからなにが起こるのか。
※あそこに人が住んでいたんだよなぁ
......とくに興味があるわけじゃない。
たまたま取り壊す現場を見たから、ちょっと考えてみただけの話だ。
世の中は少しずつ変わっていく。
私たちが見ているところでも、見ていないところでも。
2月なのに暖かい昼下がりの出来事だった。