旧前田侯爵邸 / チューダー様式の洋館
2008年 東京都:南部 建物:近代遺産 日本庭園駒場公園にある旧前田侯爵邸を見学してきた。
地図には「東京都近代文学博物館」と出ているが、2002年(平成14)に閉館。現在は建物のみ土日祝日に見学できる。驚いたことに入場無料だ。近代建築もいろいろ見てきたが、無料とは珍しい。
※イギリス後期ゴシック様式の流れを引くチューダー様式
まずは和館から
本館の前に和館があったので入ってみる。会議室として借りることもできるようだ。洋館と和館が分離した構造は旧岩崎邸に似ている。特別なものはないが、広間から見える庭園は素晴らしかった。
※本館(洋館)のとなりにある和館
※広間の向こうに庭園が見える(庭園の写真は割愛)
前田家の第16代当主の本邸
この建物は、旧加賀百万石の前田家第16代当主・前田利為(まえだ・としなり)侯爵の本邸として、1929年(昭和4)に建てられた。しかし戦時中、前田侯爵はボルネオ沖で不慮の死を遂げる。終戦後は占領軍に接収され、1957年(昭和32)に国が買い取り、東京都指定有形文化財に指定された。
※旧応接室
※大きな鏡があるわけではない
余談だが、前田利家を祖とする前田氏(加賀藩)は13代目で廃藩置県となっている。前田本家は侯爵の位を受けていた。まぁ、詳しいことは各自で調べてくれ。
東洋一の邸宅
館内は思っていたより広く、豪奢だった。どの部屋にも大理石のマントルピースがある。旧岩崎邸や旧古河邸より華美な印象を受ける。さすがは侯爵。
2階に3人娘の部屋があるんだけど、子どもの教育的にどうかと思う広さだった(写真は割愛)。
※館内の照明
※2階へ
※テラスには出られない
※重厚な造りの書斎
裏手も解放されている
本館は「ロ」の字型になっていて、裏手は使用人が使うエリアと思われる。ありがたいことに裏手も見学できた。前田侯爵邸には100人以上の使用人がいたというから、舞台裏も大きい。
1階の厨房と3階、それに地下室が見学できない。破風の3階は見てみたかったな。
※中庭越しに中央階段を見る
※裏手の階段は質素
※屹立する煙突
※裏手の部屋は殺風景
「和」の割合は低い
和室もあるにはあったが、その扱いは小さい。時代が昭和に移ると、和室への依存度も減ったのだろうか。和室は「厚生室」と呼ばれている。どういう意味だろう?
※和室の窓から見える洋館
駒場公園を抜けて
たっぷり館内を見たあとは、駒場公園を歩いた。円形の芝生で多くの人が遊んでいる。ここは前田侯爵邸の庭だったんだよね。いやはや。
※テラス側
おもしろかった。無料開放されているのはありがたいが、不心得者が壁に傷など付けないか心配だ。そんな不心得者は無料であっても見学に来ないか。駒場公園ともども、未来まで残ってほしいよ。
そう言えば前田侯爵の別邸が鎌倉にあって、現在は「鎌倉文学館本館」として、ときどき公開されているそうだ。機会があれば、見てみたいね。
■旧前田侯爵家駒場本邸 (Former Maeda Estate)
[住所] 東京都目黒区駒場4-3-55 駒場公園内
[電話] 03-5321-1111
[歴史] 1929年(昭和4年)竣工
[料金] 無料