久里浜・大正丸で関東沖釣り / 釣れるのはイイね
2010年 神奈川県 スポーツ・釣り 交通:船 日本の灯台50選 灯台「ねぇ、釣りに行かない?」
N氏に声をかけられ、取引先の釣友会に混ぜてもらった。釣り船による「沖釣り」というやつだ。右も左もわからぬ初心者だけど、アジとサバを6尾ほど釣ることができた。
しかし強く印象に残ったのはサバの血抜き。あれは精神的にまいった。
なにを経験したか、記録しておこう。
未明に集合、すぐ出航
7時20分に久里浜集合。電車じゃ間に合わないので、N氏の車に乗せてもらった。
N氏の家を出たのが午前4時。途中、同僚だった友人Tと合流する。Tは、9歳になる息子を連れていた。なんでも毎週のように親子で釣りをしているそうだ。釣りの道具もばっちり揃ってる。本格的だ。
※1,980円で買ってきた長靴:何回使うだろう
※先に出航するとなりの船を見送るT氏親子
久里浜・大正丸
久里浜に着いたのは6時半ごろ。メンバーが揃ったので、7時前に出航した。
料金は船代、レンタル竿、仕掛け、エサ、クーラーボックス、氷などを合わせて約1万円。
今回の参加者は、私を含め大人10名と子ども1名。釣友会がどういう集まりかは知らない。私なんかが参加していいのか気にしてたけど、見知らぬ人の存在を気にするような人たちではなかった。それでいて親切に教えてくれる。居心地がよかった。
※私はスキーウェアを着てきた(赤いのはライフジャケット)
※出航だ
釣り船 大正丸
[住所] 神奈川県横須賀市久里浜8-5-13
[電話] 0468-35-0076
[URL] https://www.gyo.ne.jp/taishou/
久里浜沖のミッション
ターゲットはマダイ。片テンビンにコマセビシをつけ、マキエを詰める。つけ餌は沖アミ。タナは海底から6mくらい。深さはミチイトの色で測る。ハリスが6mもあるから、オマツリに注意。
……さっぱり、わからない。
※釣れない
※釣りの道具は工夫が凝らされている
そして、さっぱり釣れない。私だけでなく、だぁれも釣れない。
(このまま8時間もぼーっとしてるのはつらいなぁ)
と思っていたら、マダイはあきらめて、アジ釣りをすることになった。新しい仕掛けをもらって、言われるままセットする。なにがどうなるんだろう? 大正丸は久里浜沖を離れ、浦賀水道に向かった。
※けっこうなスピードで航行する
海獺島(あしかじま)
久里浜港の沖合に、白と黒の灯台が立つ岩礁が見えた。入道埼灯台を短くしたような灯台だ。釣り人はなんの感慨もないようだが、私は灯台ファンなので興奮してしまった。
ここは海獺島(あしかじま)。明治中頃までアシカが生息していたらしい。海獺島灯台が造られたのは1916年(大正5年)。
海獺島灯台を、まさか船から見ることになるとは思わなかった。
※海獺島灯台
※よく見ると島は2つで、四角い白い建物は波浪観測所
※ひとり興奮するが、だれもわかってくれない……
過去の旅と照合する
大正丸に乗り込んだ久里浜は、浦賀ドック特別公開!! 久里浜ウォーキングで歩いたところ。くりはま花の国の看板が見えた。
浦賀水道に向かう途中、浦賀燈明堂や戦没船員の碑(大浦堡塁)、観音埼灯台が見えた。その先にあるのは記念鑑・三笠と猿島。奥に横須賀基地がある。
千葉側の富津岬は見えなかったが、第二海堡がぼんやり見えた。この数年で、だいぶ詳しくなっていた。
※海から見た観音埼灯台
※第二海堡:望遠レンズがほしい
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浦賀水道は漁船がいっぱい
浦賀沖は漁船がいっぱいだった。全方位に漁船がいる賑やかさは、写真では表現できない。これほど釣り人が多いとは思わなかった。自分がやらない趣味はマイナーと思うのは誤りだった。
※漁船がいっぱい
アジとサバが釣れた
停船し、アジ釣りがはじまった。すると、みな次々に釣れはじめた。アジとサバがどんどん連れていく。しかし私は釣れない。なにが悪いのだろう?
やがて私も1尾釣れたが、小さなイシダイだった。あうー。
※N氏が釣ったアジ
※私の1尾目、ちんまいの
適当に竿をふっていたら、大正丸の船長に怒られた。
「ちがうだろ。こうやって、こうする。4mじゃなくて、3m。ここ。タナを変えるな!」
魚がいるのは海底から2~3mくらいの深度だけで、そこを「タナ(棚)」と呼ぶ。沖釣りのキモは、タナの深さに釣り針をおろすこと。そんなものかね、と思っていたらすぐ釣れた。おおぅ、こんな早く結果が出るとは思わなかった。
タナの概念がわかると、ほいほい釣れるようになった。しかし問題があった。
サバの血抜き
サバはすぐ生臭くなるので、血抜きをしなければならない。最初のサバはN氏が血抜きをしてくれた。それは、サバのエラをペンチで引っこ抜くという処理だった。
うわっ、痛々しい!
バケツの水がみるみる血に染まっていく。エラを引っこ抜かれても、サバはなかなか死なない。バケツの水の中でもだえ苦しみ、時間をかけて死んでいく。ずっと尾っぽがぴくぴく動くのだ。
(水の中なのに苦しい。息ができない!)
と思っているだろうか。うぎゃー。
※これがサバの血抜き
血を見たショックに打ちひしがれながら、ふたたび釣り糸を垂らす。すぐにアタリがあって、またサバが釣れた。N氏も自分の釣りで忙しい。今度は、自分の手でやらないと。
エラをペンチで引っこ抜く──。
苦しませないよう、一発で決めたいが、魚はなかなか死なない。手際が悪くて申し訳ない。
鳥の血に悲しめど魚の血に悲しまず。 声あるものは幸福也。 ──齋藤緑雨(批評家)
※赤い部分をペンチで引きちぎる
※あわわ……やってしまった……
※手が震えてる
N氏はアジばっかり、私はサバばっかり釣れる。釣れるたび、血抜き処理をする。つらいけど、やるしかない。指先が震えているのに、だんだん慣れていく。ちくしょー!
「指を突っ込んで、こそぎだした方が早いよ」
とTは言うが、指なんか突っ込めるか! エラに噛まれないことはわかってる。わかってるけど、できないよ。少なくとも今回は!
Tは慣れた手つきで内臓も洗い出していた。私もペンチを奥まで突っ込んでみると、内臓がぞろりと出てきた。ぎゃぎゃー!
※釣果(私のオペを受けた患者たち)
船酔いについて
どのくらい酔うのか知りたかったので、今回は酔い止めの薬を飲まなかった。結果、少なからず酔った。船が小さいので、揺れがはげしい。「うぷっ」と内蔵がよじれるので、遠くを見てごまかした。水平線を見てると、いくぶんおさまる。
しかし絡まった糸をほどいたり、血抜きをしてる間は、ずっと手元を見てるので、酔いがひどくなる。血を見たショックもあって、やばい瞬間もあったが、なんとか堪えた。吐くまで、酔い止めは飲まないつもりだ。
ただ、家に帰ったあとも船酔いはつづいた。船の上よりつらかったかもしれない。
※15時、下船する
※地面はいいなぁ
見えないものを楽しむ
釣れるタイミングはそう長くない。魚は群れで行動するので、釣れるときは釣れる、釣れないときは釣れないのだ。だから釣れるときは手を止めず、どんどん釣った方がいい。
ベテランは、血抜きなどの処理をきちっとしながらも、ふたたび釣りに戻るまでの時間が短いそうだ。反面、釣れたとたんに大騒ぎして、機を逸してしまうのが初心者。まさに私だ。
タナにしても、釣れる時間にしても、釣りは見えないものが多い。そもそもターゲットである魚が見えてない。釣りは、見えないものと格闘するスポーツだった。
ん、スポーツという言い方は適切でないが、なんと言えばいいのだろう?
※熱いお茶がうれしかった
釣りの楽しみは独特で、うまく説明できない。体力も技術も知能も使うんだけど、それ以上に性格が影響するような……。釣りに似ているものがない。
私自身、釣りの楽しみがわかったとは言い難い。それでも、またやってみたいと思うようになっていた。