南極観測船「しらせ」を見学 / 新たな試みに期待

2010年 千葉県 交通:船 社会見学
[WGS84] 35.664165, 139.990915 - Google Earthで開く(kml)

 南極観測船「しらせ」を見学してきた。

 ネットを巡回していたら、「しらせ」が新習志野(千葉県船橋港)に係留されていて、無料で乗船見学できることがわかった。これは行かねばなるまい。声をかけたところ、またもや黒侠が手を挙げたので、3人分で申し込んだ。当日は寒く、小雨もぱらついていたが、無事に見学できた。
 私もいろんな船に乗ってきたけど、「しらせ」は大きく、ユニークな船だった。またウェザーニューズ社の取り組みも興味深かった。

SHIRASEプロジェクト

 見学は無料だが、ふらりと現地を訪れることはできない。事前に申し込んで、京葉線・新習志野駅から専用バスで送迎してもらう。バスを運転したり、案内してくれるのはウェザーニューズ社の社員たち。専門の案内スタッフはおらず、社員が持ち回りで担当しているそうだ。
 バスが工業地帯を抜けると、アラートオレンジの船体が見えてきた。

SHIRASEプロジェクト
※バスから見える「しらせ」

SHIRASEプロジェクト
※さぁ、乗船しよう

 現在、「しらせ」は民間の気象情報会社ウェザーニューズが所有している。同社は「しらせ」を環境情報発信基地として活用するそうだ。「SHIRASEプロジェクト」と銘打たれているが、今ひとつ方向性がわからなかった。まだ手探り状態なのだろう
 ちなみに「しらせ」の船名は除籍されているので、「SHIRASE」と呼称するのが正しいが、面倒なので「しらせ」と呼称する。

砕氷船しらせ

 「しらせ」は、「宗谷」「むつ」につづく3代目の南極観測船。南極に物資や人材を輸送したり、途上でさまざまな観測を行ってきた。任務の性質上、砕氷能力は欠かせない。そのため砕氷船とも呼ばれる。第50次以降の任務は、後継艦の「しらせ2」が受け持っている。

SHIRASEプロジェクト
※船体を居抜きで買い取ったので、見学には注意が必要

甲板からブリッジを見る
※甲板からブリッジを見る。かなりでかい。

きみも南極へ

 私はこういう特殊な船が大好きで、いろいろ本を読んでるけど、実物を見ること以上の学習はない。船内を案内してくれた社員が南極地域観測隊員だったので、いろんな実体験を聞くことができた。その内容を書き連ねるのは芸がない。興味がある人はぜひ乗船してほしい。
 なお、南極地域観測隊員は南極観測ホームページで公募されている。極地で働くことは貴重な経験かもしれない。
 私? 私はちょっと、腰が......。

寝室
※寝室:夜間は目を慣らすため、赤い光で生活していたそうだ

手術室
※手術室:もし南氷洋で手術が必要な事態になったら......

SHIRASEプロジェクト
※環境を考えるには、惑星規模の視点が必要だ

 「しらせ」は排水量:11,600t/全長:134mで、宗谷(排水量:4,100t/全長:83.3m)より一回りも大きい。氷川丸(排水量:11,622t/全長:163m)と同じくらいか。しかし全幅は「しらせ」の方が広い。幅が広いのは、砕氷船の特徴のようだ。
 砕氷能力を優先したため、乗り心地はよろしくないそうだ。まぁ、氷に船首を乗り上げて、砕きながら進むような船に乗り心地もないか。最大で左53度、右41度まで傾斜(動揺)したそうだ。53度も傾いて、よく転覆しなかったもんだ。

すみずみまで見学できる
※すみずみまで見学できる

船尾のヘリ甲板
※船尾のヘリ甲板:広ーい!!

 ウェザーニューズが主催するだけあって、単なる船体展示ではなく、気象情報の提供に関する話題が多い。船橋上でも、「雲の読み方」がレクチャーされた。いま晴れてる、いま曇っているだけでなく、未来の天候を予測する。見るべきはiPhoneではなく、空の方だった。

船橋上にて
※船橋上にて

船首を見下ろす
※船首を見下ろす:航行能力はない

船橋も広いなぁ
※船橋も広いなぁ

総括

 「しらせ」の乗船見学は楽しかった。しかし、すべての人が楽しめるかどうかは怪しい。いろいろ説明してくれるけど、ある程度は南極観測船についての知識が必要だ。まぁ、なにも知らない人がわざわざ見学を申し込むこともないか。
 気になるのは、この先だ。これから「SHIRASEプロジェクト」はどのように展開するだろう? あるいは、どう展開してほしいか。ちょっと考えてみたい。

今回の参加者
※今回の参加者

 『南極物語』で有名な宗谷は、お台場の船の科学館に係留されている。二代目のふじは、名古屋の名古屋海洋博物館で見学できるそうだ。どちらもまだ見てないので、「いつか見たいリスト」にメモしておこう。
 見学終了後、私たちは隣接するサッポロビール千葉工場に立ち寄った。こちらの工場見学も、事前に申し込んでおいたのだ。

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