夏の吉川出張(2/4) はじめての田植え、はじめての山菜

2012年 新潟県 #吉川出張
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「田植え、やってみませんか?」

 販促の写真撮影のため、手で田植えをしてもらう。いつもは田植機を使っているが、やはり手で植える方が「それっぽく」なる。つづいてライターの方々が、実際に田植えをやってみることになった。見るだけより、手で触れた方が、いい記事が書けるだろう。私はうらやましく思っていたら、すすめられたので飛びついた。ひゃっほー♪

吉川:ぜんまいと棚田
※ぜんまいと棚田

水田の土はクリーミー

 長靴を履いて、田んぼに入る。ずぐっと足が沈む。深い。水田の水は温かく、土はクリーミーだった。粒子が細かいので、乾くと粉末になる。そのへんの土とまるでちがう。長い年月をかけて磨かれてきた土なんだろうな。
 福島の農家は、原発事故によって汚染された土を削るよう指示されている。表土が流出しない水田というシステムが、放射性物質の流出では裏目に出てしまった。先祖代々受け継がれてきた土を捨てろと言われる苦悩は、私たちには想像もできない。

吉川:まず田んぼに線を引く
※まず田んぼに線を引く

吉川:田植え、やってみませんか?
※田植え、やってみませんか?

 手で植えをするときは、野球場を整備するトンボのような器具でラインをひく。このラインに沿って、1人で3条ずつ、20~30cmくらい間隔で苗を植えていく。
 苗は、べつのところで発芽させた「マット苗」を使う。種苗会社から供給されたものではなく、自分たちで栽培している。底の白い部分はウレタンではなく、びっしり張り巡らされた根だ。ここから2,3本の芽をむしって、水田の土にうずめていく。

吉川:マット苗:白い部分はすべて根
※マット苗:白い部分はすべて根

吉川:2,3本をむしって、植えてください
※2,3本をむしって、植えてください

かなりの重労働

 むしるとき、けっこう手の力を使う。根がぶちぶち切れるけど、新しい根が生えるから気にしなくていいそうだ。きれいに植えたいけど、思うように身体が動かない。足を引っこ抜いたり、バランスを取るのに筋肉を酷使する。おまけに畦に抜けるまで、腰を下ろすこともできない。思っていた以上に重労働だ。
 しかし60代、70代のおじいちゃんが速く、正確に植えていくのをみると、私たちの体力不足の方が問題かもしれない。

吉川:けっこう大変だ
※けっこう大変だ

「だからさ、田植機がありがたいのさ」
 田植機を使ったときは、その便利さに感激したそうだ。ちなみに田植機には手で押す「歩行型」と乗り込む「乗用型」がある。乗用型の方がらくちんだが、棚田では使いにくいし、歩行型にしても小さい棚田で切り返すのは大変だ。
 それでも、田植機の恩恵は大きいという。うーん。日本のロボット技術で、田植えロボットを作ってほしいよ。

吉川:畦で見つけた蛇の皮
※畦で見つけた蛇の皮

田植え中の休憩

 撮影が終わると、田んぼのそばにブルーシートを敷いて、一服いれることになった。田植えの途中、家まで戻るのは面倒なので(高低差がある!)、こうしてお茶と軽食を振る舞う習慣があるそうだ。地元の呼び名を聞きそびれてしまった。方言と早口で、油断してると言葉の意味を追い切れなくなる。

吉川:ブルーシートを敷いて、ちょっと休憩
※ブルーシートを敷いて、ちょっと休憩

 おばあちゃんが用意してくれた重には、筍の煮付け、ぜんまい、きゃらぶき、ぎんなんなどの山菜が入っていた。それを大葉に包まれた赤飯で食べる。パッとしないメニュー......と思うだろうが、さにあらず。これが泣くほどうまかった!!
 どれほどうまかったか、グルメ漫画のように形容しても詮無きことだろう。とにかく、うまかった。生まれてはじめて山菜を食べたような気がする。これまで食べてきた山菜なんてクズだ。
 無我夢中になって食べた。食べるほど幸せになった。

吉川:泣くほどうまかった
※泣くほどうまかった

素晴らしい山の幸

 これらの山菜はすべて山で採れたものだった。筍は放っておくと伸びてしまうため、せっせと刈り取っているそうだ。物流がないから、あく抜きがいらないほど新鮮だ。ぜんまいは乾燥させるため、年間を通じて食べられる。素晴らしい。
 もちろん、いいことばかりじゃない。筍は放っておくと伸びてしまうため、食べたくなくても刈り取らなければならない。食べきれない筍は、蹴って折るそうだ。ぜんまいの採取、乾燥、保存、もどしも手間がかかる。生活に余裕がないと、山菜を楽しむことはできない。

吉川:ぜんまい
※ぜんまい

吉川:筍の煮付け
※筍の煮付け

吉川:世帯ごとに味付けが異なる。ここはニシンが入っていた。うまい。
※世帯ごとに味付けが異なる。ここはニシンが入っていた。うまい。

吉川:乾燥したぜんまいは数年もつとか
※乾燥したぜんまいは数年もつとか

お土産の筍

 2日目の帰るまぎわに、お土産に筍を分けてもらうことになった。家のすぐ裏手に竹林があって、クワで掘っていく。竹林はブヨがいっぱいで、つねに動いてないと刺されてしまう。注意していたけど、私も2箇所ほど刺されて、猛烈に痒くなった。筍採りも大変だ。

吉川:家のすぐ裏手が竹林:竹が傾いているのは雪の重みのせい
※家のすぐ裏手が竹林:竹が傾いているのは雪の重みのせい

吉川:おじいさんに掘ってもらう
※おじいさんに掘ってもらう

吉川:たくさん採れた
※たくさん採れた

 私は欲張って、5本の筍をもらってしまった。家まで持ち帰るのは大変だったけど、調理した筍料理は格別だった。筍は鮮度が大事なんだね。採れてから4時間足らずの筍は、水でアク抜きできる。ヌカをいれると、風味がヌカっぽくなる。私は筍の味も知らなかった。

(つづく)

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