夏の吉川出張(3/4) 杜氏の郷で飲んだくれ

2012年 新潟県 #吉川出張
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 あちこち取材したあとは、宴会の夜が待っていた。

 東京から来た健菜チームと、吉川の契約農家の方々が一堂に会する。吉川の人々はべらぼうな酒豪ぞろいで、あっという間に飲まされ、飲まれてしまった。珍しくL氏も酔っぱらってしまい、なにがなんだかわからなくなった。
 でも、楽しかった。

吉川:スカイトピア遊ランド
※スカイトピア遊ランド

スカイトピア遊ランド

 「スカイトピア遊ランド」は、吉川区唯一のホテル。廃校になった小学校を改装したため、「学校ホテル」と呼ばれている。かつて学校だったことは施設の売りになっている。なのになぜ「スカイトピア」なんて名前にしたんだろう? センスないなぁ。
 部屋は教室を改装したものだが、教室らしさはなかった。しかし廊下や階段は学校らしかった。

吉川:ホテルの廊下(翌朝)
※ホテルの廊下(翌朝)

 センスと言えば、料理にも不満がある。山奥なのに、なぜカニや刺身などの海産物が出てくるのか? どうして筍や山菜を出さないのか?
 訊ねてみると、きちんと理由があった。まず日本海が近いので(クルマで小一時間)、海産物は手に入りやすい。それからホテルとはいえ外部からの宿泊者は少なく、地元住民の利用が多い。すると、ふだん食べ慣れている筍や山菜でないものが喜ばれるそうだ。
 なるほど~。納得したけど、納得できない。この山菜を食べるために来てもいいくらいなのに。身近にあるものは、価値がわかりにくいのか。

吉川:2階は体育館になっていた(翌朝)
※2階は体育館になっていた(翌朝)

酒は飲んでも飲まれるな

 話を宴会に戻そう。
「この人たちは飲兵衛だから、すすめられるままに飲んだら危ないよ」
 とL氏に警告されていたが、そのとおりだった。
 勧め方が強烈だ。ビール瓶や徳利を突き出して、じっとこっちを見つめるのだ。
「いえ、お酒に強くないので......」
 と言っても、まるで動じない。じっとこっちを見つめる。
 間が持たなくなって酒を少し飲んで杯を出すと、ふるふると首を振る。やむなく飲み干すが、また首をふる。杯をひっくり返して、一滴もないことを示せと言われる。一滴も残ってないことを確認すると、にっこり笑顔で酒をつぐ。うはー。
「こーゆーの、都会ではパワハラですよ」
「ここは吉川だから、わがんね」
 すかさず、となりの人が徳利を突き出してきた。やむなく杯を飲み干し、ついでもらう。この繰り返しだ。こんな猛攻、どうさばけばいいのか。

吉川:宴会の初期段階。終盤の模様はお見せできない。
※宴会の初期段階。終盤の模様はお見せできない。

「ほら、飲んでッ!」
 いきなりL氏が徳利を突き出してきた。L氏は身を守るため、酒をついでまわっていたのだが......返り討ちになってしまったようだ。攻撃は最大の防御ではなかった。肉を切らせて骨まで断たれてしまうとは。
「な、なんで味方を刺すんです!?」
「いいから飲め! 飲めー!」
 前後不覚になったL氏は、コップやら徳利を倒しまくる。カオスすぎる。

吉川は杜氏の郷

 米の名産地だった吉川は、古くから酒造りが盛んで、その技術者(杜氏)が各地に赴いて日本酒の文化を広めたそうだ。漫画「夏子の酒」(尾瀬あきら作)の中で、夏子が頼りにする「じっちゃん」たちも、よしかわ杜氏だ。吉川には、全国で唯一、公立高校に醸造科があったとか。なのに吉川には蔵元がない。不思議な土地柄だ。
 私も全国の酒蔵を訪ねて歩いているので、そのへんの話題で盛り上がった。おもしろかった。

吉川:飲んべえ
※飲んべえ

 とまぁ、こんな感じで宴の夜は更けていった。
 宴会は22時に終わったが、私は残留者に付き合って23時まで飲み、24時に風呂に入って、倒れるように寝た。
 翌朝、L氏は二日酔いになっていた。私もふらつくところはあったが、旅行モードでアドレナリンが分泌されていたので影響は少なかった。
 出張2日目もあちこちで撮影してまわった。

(つづく)

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