リアル脱出ゲーム体験記 / ある廃病院からの脱出

2012年 東京都:新宿副都心 遊園地
[WGS84] 35.681419, 139.685171 - Google Earthで開く(kml)

 R子に誘われて、リアル脱出ゲームに参加した。

 R子はリアル脱出ゲームのマニアで、開催されるたびに申し込んでいる。今回は6名でチームを組むイベントだったため、お呼びがかかった次第。初体験なので戸惑うことも多かったが、おもしろかった。ネタバレしない範囲で、どんなものだったか、どんなことを考えたかを記録しておきたい。

リアル脱出ゲームとは

 リアル脱出ゲームは、Flashなどで作られる「脱出ゲーム」を現実の舞台で再現したアトラクション。倉庫や遊園地などの閉鎖空間で、散りばめられた情報を集め、謎を解き、アイテムを組み合わせ、制限時間内に脱出ルートを探す。制限時間を過ぎると「失敗」になるが、「くやしい!」と思う以上のペナルティはない。リアル脱出ゲームの成功率は決して高くない。

これまでの脱出成功率
  • あるドームからの脱出@東京ドーム - 成功率16.4%
  • 人狼村からの脱出@東京カルチャーカルチャー - 成功率9.6%
  • 夜の遊園地からの脱出@ナガシマスパーランド - 成功率19.7%
  • ある使徒からの脱出@富士急ハイランド - 成功率5.4%
  • ある合戦からの脱出@明治神宮野球場 - 成功率9.4%

コラボ企画:ある廃病院からの脱出

 今回参加したのは「リアル脱出ゲーム×バイオハザード ある廃病院からの脱出」というイベント。本当の廃病院(旧玉井病院)を舞台に、バイオハザードの世界観をモチーフにしている。チケット代は3,150円。R子に取ってもらったので、その手順や苦労はわからない。

ある廃病院からの脱出

イベント名リアル脱出ゲーム×バイオハザード ある廃病院からの脱出
イントロ数年前に突然閉鎖された病院。その廃病院では細菌兵器を製造していたという噂があった。あなたは国連の依頼でその病院に派遣された調査員。調査の途中で、突然扉が閉まり閉じ込められてしまう。ウィルスはあなたの体を確実に蝕んでいく。一時間以内にワクチンを見つけないと手遅れになってしまう。廃病院を舞台に繰り広げられる異常な脱出劇。あなたはこの病院から、脱出することが出来るだろうか?
開催期間2012年7月19日(木)から8月31日(金)の木金土日。
会場旧玉井病院(初台玉井病院スタジオ)
チケット前売3,150円(税込)、当日券3,650円(税込)
制作株式会社SCRAP ※リアル脱出ゲームは株式会社SCRAPの登録商標です。
公式サイトhttps://bio-realdgame.com/

本物の廃病院が舞台

 11時に初台オペラシティで待ち合わせ。R子が招集した6名は互いに面識がないため、おのずとR子がリーダーとなる。軽く食事を取って、初台玉井病院スタジオ(旧玉井病院)へ。ここは本物の廃病院で、ドラマや写真撮影のスタジオになっている。古い病院で、ホラー映画に出てきそうだ。スタッフも白衣を着てるので、なかなか雰囲気がある。

ある廃病院からの脱出
※初台に廃病院があったとは

 私たちは12:30からの回。ゲームの制限時間は60分だが、前後の説明で1時間半くらいになる。当たり前だが、遅刻による途中参加はできない。
 土曜日は2時間半ごと、6回の上演が行われる。1回あたり10チームが参加していたから60名。つまり3,000×60=180,000円だな。必要経費や粗利の計算をしてしまう。

初台玉井病院スタジオ

[URL] https://www.planear.co.jp/index.php/studio/hatudaitamai.html
[利用料] 12時間で231,000円
[備考] 24時間撮影可能。白衣やナース服のレンタルあり。

簡単だけど難しい謎解き

 リアル脱出ゲームに参加する人が知っておくべきルールは、だいたいこんなもの。

  • 持参すべき道具はない。紙と鉛筆は配布される。
  • ゲーム中の写真撮影はかまわない。むしろカメラはあった方がよい。
  • ゲーム中に携帯電話で仲間と情報交換したり、ネットで情報収集してもよい。裏を返せば、そうした行為がズルになるような謎解きはない。
  • ヒントは目に見える位置にあり、めくる、やぶる、動かす、壊すなどの行動は、無意味かつ迷惑なので禁止。
  • 身体能力や感覚の鋭敏さ、専門知識、特殊技能を問われる謎解きはない。
  • 同じゲームに2度参加してはならない。
  • ネットや口頭でのネタバレ禁止。

 まぁ、一般客を対象としたアトラクションだから、アスレチックのような関門はない。出題される謎も、小学生でも解ける「なぞなぞ」レベルだ。答えを聞かされれば「なるほど」と納得するが、自分だけの力で、制限時間内に答えを見つけるのはかなり難しい。

ある廃病院からの脱出
※LINEでアドレス交換しておく

 最大のライバルは時間だ。脱出するまでに突破すべき謎の数が不明なため、時間配分を考えるのは愚かだ。とにかく早め早めに行動すべし。
 それから「いま必要ないヒントを無視するセンス」が求められる。謎解きのため、より多くの情報を精査しようとするのは、大人の悪いくせだ。一方で、「あとで必要になるかもしれない情報をおぼえておくセンス」も求められる。

あなたはゲームの主人公じゃない

 今回は6名でチームを組むわけだが、チーム参加のイベントは珍しいそうだ。チーム参加だが、ほかのチームと助け合ったり、競い合うことはない。原則、ほかのチームは存在しないものとして行動する。とはいえ、ほかのチームを邪魔しないよう、謎解きを大声で話さない、通路を塞がないと言った配慮は求められる。

ある廃病院からの脱出
※ヒントを集めろ

 6名がつねに集団行動するわけじゃない。手分けしてヒントを集めたり、個別に謎解きすることもある。集団行動にこだわると動きが鈍くなる。しかし個別行動を優先すれば、情報共有がおろそかになる。
 謎解きは発想の勝負。いつも鈍くさい人が、ずばり答えを見いだす可能性はある。それこそチーム参加の醍醐味ではあるが、だからといって情報共有に時間をかけ過ぎても駄目だ。

ある廃病院からの脱出
※情報にプライオリティをつけろ

 今回、私はある出遅れから、最新情報を把握できなくなった。「その場にいるけど、今なにしてるかわからない人」である。ゲームなら主人公である自分のところに情報が集まってくるが、現実はそうじゃない。
 情報を把握できれば、謎が解けたと言いたいわけじゃない。私は「一歩ひいて、みんなについていく」スタンスを取っていたつもりもない。ただの巡り合わせで、誰が悪いわけでもない。
 ただ、そのせいで、「もうすぐ謎が解けるかもしれない人に、状況説明を求めてよいか?」という、よけいな悩みを負うことになってしまった。逆もしかりだろう。なるほどチーププレイでは、こうしたズレが生じるのか。それがわかったのは、大きな収穫だった。

ある廃病院からの脱出
※謎を解け

 さて、私たちが脱出できたかどうかは、伏せておこう。やってみるとわかるが、成否は重要じゃない。わずか60分だが、濃密な時間を体験できた。おもしろかった。

謎解きが好きな人、出題が好きな人

 リアル脱出ゲームは生まれたばかりのアトラクションで、いろんなアプローチが試されている。私もいろんなアイデアが浮かんだが、実際にやってみると思わぬ弊害が起こったりするんだろうな。スタッフは経験を蓄積し、よりよいゲームを開催できるようになるだろう。先行きが楽しみだ。

ある廃病院からの脱出
※反省会しようぜ~

 私は映画館に行く前より、出てきた後の方がうるさくなるタイプである。体験したことを分析して、あれこれ考えることが好きなのだ。
 しかしR子をはじめ、リアル脱出ゲームの常連客は、終わったゲームを回顧する趣味はなく、次のゲームへの期待で胸一杯だった。話がとことん噛み合わず、さびしかった。

 帰り道は晴れていた。
 暑い8月の土曜日だった。

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