冬の吉川出張(1/3) 精米施設の細やかな戦い
2013年 新潟県 #吉川出張健菜倶楽部の新年会に呼ばれて、上越市吉川町へ行ってきた。
新潟の雪はすさまじかった。夏、秋と訪れているのに、初めて見る情景になっていた。今回は新年会がメインなので、精米施設を1つ取材したのみ。あっさりした工程だが、とにかく雪に遮られてなにもできないのだ。新潟の人々は、こんな冬を過ごしていたのか。知識としては知っていたが、わずかとはいえ体験できてよかった。
冬は列車の旅
冬のドライブは危険なので、列車で行く。上野駅から越後湯沢まで、上越新幹線で70分。けっこう早い。東京から名古屋が101分だから、それより近いのか。
越後湯沢を降りると、ひんやりした冷気に包まれる。冷蔵庫の中にいるようだ。
北越急行ほくほく線に乗り換える。強風のため、特急「はくたか」は終日運休。始発も折り返してきた。各駅停車もどこまで行けるか、どのくらい遅れるかわからないとアナウンスされる。不安だが、行くしかない。
※越後湯沢で「ほくほく線」に乗り換え
平野部は地吹雪
くびき駅に着いたのは12時半。さいわい遅延はなかった。迎えの車に乗り換えて、精米施設に向かった。
地吹雪のせいで、視界は真っ白。ちゃんと道路を走っているかどうかも怪しくなる。「地吹雪で立ち往生する」という言葉の意味が理解できた。車の中から何枚か写真を撮ったけど、白いだけなので割愛する。
JAえちご上越 精米施設
JAえちご上越 精米施設(産直精米工場)は、2011年の秋に開設したばかり。最新鋭の設備が揃えられている。
健菜倶楽部は、吉川町で生産される健菜コシヒカリの精米施設として、ここを検討しているそうだ。施設の従業員に案内してもらう。私は部外者だけど、とても勉強になった。
※JAえちご上越 精米施設
※施設内の様子
※このストーブで、施設内の温度を想像してほしい
精米にかかる手間
この施設では入荷した玄米を精選しながら精米、無洗米加工、計量、包装している。また全行程の稼働履歴を記録し、トレーサビリティを実現している。
※搬入された玄米
※荷受ホッパー:ここがスタート
「精米」という工程があることは知っていたが、実際の設備は驚くほど多くの工夫が凝らされていた。至上課題は異物の混入を阻止すること。小石や木片より厄介な虫の侵入を防ぐため、施設は気圧を高めて見えないバリアーを張っている。床や壁際にもチリひとつ落ちてない。パイプやタンクは振動することで細かなカスをふるい落とす。固定されたパーツも入念に清掃される。そこまでやるのかと畏れ入る。
※各工程で異物が除去されていく
※虫が入らないよう、あらゆるパーツが清掃される
NTWP(ネオ・テイスティ・ホワイト・プロセス)加工法
無洗米を作る方法はいくつかあって、その1つがNTWP(ネオ・テイスティ・ホワイト・プロセス)加工法。簡単に言えば、タピオカに糠を付着させて取り除くわけだ。タピオカは繰り返し使用できるので、排水を出さない。反面、乾燥や加熱のためボイラーが必要になる。
無洗米加工には時間がかかる。だいたい処理量が4分の1に落ちるそうだ。こうして見ると、無洗米は高く販売しないと割に合わないように見えるが、消費者の購入価格はほとんど差がない。同じ値段なら無洗米の方がいいだろう。今後は無洗米が主流になっていくのだろうか。
※無洗米加工装置 (NTWPO5A)
※タピオカと米が混ざったところ
お米は貯めるな
無洗米は精白米に比べ、早く劣化するのではないか? という疑問はあるが、科学的な比較データはないらしい。いずれにせよ、むやみに長期保存しなければ問題ない。
近ごろは流通経路が発達したので、早く届けて、早く食べてもらうことを前提にしている。お米を封入するビニールも、色つきで遮光した方が長持ちするが、透明にして安心感を得ることを優先している。
生産者がどんなに注意しても、消費者がおかしな貯蔵をすれば台無しだ。1年近く放置して「虫が湧いた!」とクレームをつける人もいるらしい。食品を扱う人の気苦労は絶えない。
私たちは食品について知らなすぎる。もっとありがたくいただくべきだろう。
※学校給食用精米
※ビタミンを含む強化米が混ぜられている
※糠は優秀な肥料や飼料になる
その後、車は吉川の里へ向かった。
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