【ゆっくり文庫】コナン・ドイル「花婿失踪事件」シャーロック・ホームズの冒険

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102 ありふれた、特殊な事件──
メアリー嬢の依頼は、結婚式当日に消えた恋人・エンジェル氏を探すことだった。しかしエンジェル氏は素性も人相もさだかではない。ホームズは2通の手紙を投函した。
別題:「同一事件」「花婿の正体」「消えた花婿」「花婿の行方」「ふきかえ事件」「紛失の花婿」「妻の連子」「人非人」「同人事件の探偵譚」など。
A Case Of Identity (1891) by Arthur Conan Doyle

原作について

アーサー・コナン・ドイル

アーサー・コナン・ドイル
(1859-1930)

 同じく『シャーロック・ホームズの冒険』に収録された「独身の貴族」(The Adventure of the Noble Bachelor)が、「花嫁失踪事件」と題されることもあるから、ごっちゃになった人も多いだろう。私もそうだった。
 結末まで読むと、「なんだそんなことか」と言いたくなる。しかし私は別の見方もあると思っていた。

 2018年9月、そのアイデアをツイートする。
 大した翻案じゃないから動画化しないつもりだったが、なんとなく作ってしまった。それでも公開できず歳月が流れ、100を超えたから決心がついた。

コナン・ドイルの事情

 シャーロック・ホームズに詳しい人は、『花婿失踪事件』が『ボヘミアの醜聞』の次に執筆されたこと(短編2作目)、事件の構図にコナン・ドイルの家庭の事情が影を落としていることを知っているだろう。
 『花婿失踪事件』においてドイル(ホームズ)は、問題から目を背けた。のちに執筆された『まだらの紐』は決着まで踏み込んだ。『まだらの紐』はドイル自身がホームズ短編で第一位に置いている。つまり『花婿失踪事件』はコナン・ドイルを語る上で、大きな意味を持つ1本なのだ。
 しかしそうした背景は無視して、娯楽として翻案した。
 「作者の気持ちを無碍にしている」と憤慨する人がいるかもしれないが、それはそれ、これはこれだ。

原作のおぞましいところ

 ウィンディバンクが天罰が下らないことに怒りをおぼえるが、それ以上におぞましいのがメアリーの母親。彼女は15も年下の男と結婚し、夫の会社を安売りして、その財産を長持ちさせるため、再婚相手を使って娘をたぶらかし、絶望させ、家に閉じ込めようとしている。物語に直接出てこないけど、想像すると胸糞悪くなる。
 文庫版ではこの母親を退場させ、円満解決を目指した。

先行作品について

 『花婿失踪事件』は、グラナダTV制作、ジェレミー・ブレット主演の『シャーロック・ホームズの冒険』シリーズで、映像化されなかった18本の1つ。

人形劇『シャーロック ホームズ』第4話「消えたボーイフレンドの冒険」

 このシリーズは学園を舞台とするため、結婚式は洞窟探検に、継父は幼なじみに変えられている。お金は関係しない。特筆すべき点はないが、関連情報として記載。

消えたボーイフレンドの冒険

※学園が舞台。

消えたボーイフレンドの冒険

※惚れっぽいメアリーと、ささやき声のエンジェル。

消えたボーイフレンドの冒険

※洞窟に消えた。

消えたボーイフレンドの冒険

※情報屋ラングデール・パイク。「三破風館」のキャラ。

消えたボーイフレンドの冒険

※幼なじみのウィンディバンク。

消えたボーイフレンドの冒険

※女心を知るのに小説が参考になるよ。

コメンタリー

 メアリーだから早苗、というキャスティングも考えたが、文庫劇団の早苗はクセがあるのでチルノを起用。きめぇ丸はレストレード警部だが、気にしてられない。ホームズは本数を作ったから、だいぶキャスティングがかぶってる。

オープニング

 煙をくゆらせながら、とりとめのない会話をする少年たち。ホームズとワトソンの日常は、ぶっちゃけ事件よりおもしろい
 初版はパイプも窓もなかった。なくても十分だったが、ちょうどいい素材が見つかったので実装していった。投稿まで時間があったから、かなりブラッシュアップされた。
ゆっくり文庫「花婿失踪事件」
※会話を楽しむ。

依頼者と話す

 メアリー・サザーランド嬢が来訪。原作の記述によれば大柄で、美人じゃないし、聡明でもないが、なぜかホームズとワトソンは興味を示している。このあたりにドイルの嗜好を感じるのだが、そこまで再現しなくていいだろう。
ゆっくり文庫「花婿失踪事件」
※特徴として派手な帽子をかぶせた。

文庫式ちるの:ヴィクトリア朝淑女

※ヴィクトリア朝の帽子をかぶったチルノ

文庫式ちるの:ヴィクトリア朝淑女

※文庫式ちるの:ヴィクトリア朝淑女

ゆっくり文庫「花婿失踪事件」
※このあたりでカラクリは予想できるだろう。

仮説を立てる

 文庫版ミステリーは思考過程をオープンにする。この時点で「どうやって証明するか?」まで考えられる人はすごい。さらに「証明してどうするのか?」という問題もある。
 ミステリーは情報を明かしても、「次」を考える楽しみがある。おもしろい。
ゆっくり文庫「花婿失踪事件」
※その次を、次の次を、考えられるだろうか?

日常2

ゆっくり文庫「花婿失踪事件」
※なんでもないシーンだが、作ってみると楽しかった。

文庫式れいむ:リボンなし

※文庫式れいむ:リボンなし

文庫式れいむ:リボンなし(後ろ姿)

※文庫式れいむ:リボンなし(後ろ姿)

対決する

 私は「ホームズ」の交渉シーンが好き。『青い紅玉』で、ガチョウの仕入先を賭け事で聞き出すところ。『犯人は二人』で、ミルヴァートンと支払額交渉するところ。『最後の事件』で、モリアーティ教授との面会はたまらない。観察と推理は「できなくてもしゃーない」と思うけど、交渉や駆け引きは魅了されてしまう。
 『花婿失踪事件』の交渉目的は、ウィンディバンクがこれ以上の悪さをしないよう脅すこと。法的に罰することはできないが、「ホームズが介入してきたら、ややこしいことになる」と思わせないといけない。おおよそ原作通りだが、表情や間で威圧感を演出してみた。
ゆっくり文庫「花婿失踪事件」
※呼び出してどうするか?

文庫式きめぇ丸:モノクル

※レストレード警部との差別化にモノクルをつけた。

文庫式きめぇ丸:モノクル

※きめぇ丸:モノクル

依頼人への報告

 ホームズはメアリー嬢を部屋に招いて、ウィンディバンクの言動を聞かせる。乱暴なやり方に見えるが、これしかない。恋する娘に「あいつは悪いやつだからやめなさい」と説得しても無駄だ。『高名な依頼人』でも苦労している。
 読者視点ではエンジェル氏は胡散臭く、好意を抱くことはないだろうけど、メアリー視点を想像してほしい。
ゆっくり文庫「花婿失踪事件」
※わかってなかった男2人。
 しかしホームズもワトソンも、メアリー嬢のことをわかっていなかった。というのが今回のオチ。
 ひょっとしたらウィンディバンクは、義理の娘を愛するためエンジェル氏に化けたのかもしれない。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。いずれにせよメアリー嬢はウィンディバンクの弱みをつかんだ。あとは彼氏彼女の事情だろう。

雑記

 文学的に意味があるとか、教養になるとか、めためた傑作ってわけじゃないが、手軽に楽しめる1本になったと思う。
 気まぐれに予告編を作ってみた。アニメ『名探偵ホームズ』風。予告編は動画を見たときの驚きや興奮を損ねてしまうだろうか?

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