【ゆっくり文庫】アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」

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116 新世界の浦島──
植民地時代のアメリカ。妻に叱られたリップ・ヴァン・ウィンクルは、山をほっつき歩いて、不思議な老人の一団と出会う。彼らの酒を飲んだリップは…
Rip Van Winkle (1819) by Washington Irving

原作について

Washington Irving

Washington Irving
(1783-1859)

海外小説で「リップ・ヴァン・ウィンクルのようだ」というセリフと、「アメリカの浦島太郎」という注釈を読む。なぜアメリカに浦島太郎が? またSF小説で「ウラシマ効果」という翻訳を見て、原語はどうなっているのか気になった。で、調べてみた。
私と同じように気になった人もいるだろうから、動画化することにした。うむ、だれかの役に立つはずだ!

 

映像化

古くて有名な作品だから、ちょこちょこ舞台化・映像化されている。

1961 砂の上の宝 / ミステリー・ゾーンThe Rip Van Winkle Caper / The Twilight Zone (#60)

1987年のTBS深夜枠『魅惑のアメリカTVシリーズ』で見た。私は16歳だった。「リップ・ヴァン・ウィンクル、浦島太郎だ!」と吹き替えてくれるのが親切。小説『リップ・ヴァン・ウィンクル』を踏まえて視聴すると、さらに感慨深い。救いのない話だが、主人公たちが悪者だから楽しめる。
砂の上の宝(The Rip Van Winkle Caper)
※ミステリー・ゾーン「砂の上の宝」

1987 リップ・ヴァン・ウィンクル / シェリー・デュヴァルのフェアリー・テイル・シアターRip Van Winkle / Faerie Tale Theatre (#25)

『ジム・ヘンソンのThe StoryTeller』(1987)と同じ年に、同じような番組があったのか。ホスト役のシェリー・デュヴァルは、『シャイニング』でジャックの妻役を演じた女優さん。ホストとは別にナレーションがいる。『リップ・ヴァン・ウィンクル』の回はコッポラが監督している。
内容は原作どおりだが、50分の尺に合わせるためか、ペンキ塗りや釣りといったシーンが追加されている。セットの使い方がおもしろい。
1987 Rip Van Winkle / Faerie Tale Theatre S6E01
※シェリー・デュヴァルのフェアリー・テイル・シアター「リップ・ヴァン・ウィンクル」

コメンタリー

今回、こーりんがだいぶ変更された。輪郭を全キャラ統一したため、幼くなった印象がある。しゃーない。これで完成ではない。自作キャラの調整は終わりがない。

文庫式こーりん2022/09
文庫式こーりん2022/09

※2022年9月時点の文庫式こーりん

ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿

ワシントン・アーヴィングが、ニッカボッカーのペンネームで『ニューヨークの歴史』という本を出版したのは事実。この本は好評を博し、オランダ人植民地の子孫を「ニッカボッカー」、オランダ人が履いていた短ズボンを「ニッカボッカーズ」と呼ぶ由来になった。であるから、「リップ・ヴァン・ウィンクル」の物語を事実と誤解した人も多いのではなかろうか
「ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿」というフェイク・ドキュメンタリー風味は本筋に関係しないが、残すことにした。「裁判所によって認められている」というのも小説の設定だ。
アーヴィングという作家はイタズラ好きだね。

植民地時代(1773年)

原作は年代を明記していない。独立戦争をはさみ、選挙があった年から逆算して、植民地時代(1773年)と合衆国時代(1793年)と設定した。
リップ・ヴァン・ウィンクルは浦島太郎と異なり、未来世界を体験する。この差をどう表現するか? SFとして考えると20年は大したことないが、建物の様式や服装、気風が変わったらしい。人生の20年は大きい。が、これを表現する写真素材は見つからない。
ふと、植民地時代をMinecraft&ゆっくり、合衆国時代を写真&立ち絵で表現することを思いつく。これで完成のメドがついた。
アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」
※植民地時代はマイクラ&ゆっくりで。マイクラは自動生成ではなく、穴を埋めたり、道を通したりしてある。
アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」
※キャスティングは『ヘンゼルとグレーテル』に倣った。
植民地時代の情景も描きたかったが、テンポを優先して省略。
原作の兄弟は子どもだが、ゆっくりで表現できないため赤ん坊にした。
原作は「ウルフ」という猟犬を連れて行くが、20年後に登場しないため省略。
アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」
※帰りたくないなぁ、と考えている間。

老人たち

原作のリップは酒樽運びを手伝い、九柱戯(ナイン・ピンズ:ボウリングの原型)で遊ぶ。そのシーンも作ったが、テンポが悪かったので没に。エンドカードに流用した。
老人たちには、東方五大老をキャスティング。全員が自作素材だと情報量が多すぎたため、罪袋に置き換えた。まー、キャラが気になる負担を減らしたいのが本音。

罪袋五大老
罪袋五大老
罪袋五大老
罪袋五大老

※罪袋五大老の4人
アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」
※老人たちはリップに関わろうとしない。
気絶するシーンは「凍った旅」から、頭の植物は「三合ばば」から引用している。リップは草に埋もれているため、紫のパーティクルで次に注意してほしい地点を示した。
アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」
※「三合ばば」の草を流用した。
リップの銃はM1ガーラントだったが、時代が合わないのでマスケット(Charleville musket)に差し替えた。マスケット銃は細長くて使いにくい。銃器のリアリティにこだわる意義はないが、解説パートで「ヘルシング」のリップヴァーン中尉(マスケット銃の使い手)を紹介するから、流れを作っておく。
M1ガーランド
※M1ガーランドの製造は1936年から

合衆国時代(1793年)

【ゆっくり文庫】シリーズはあまり背景に注目してほしくないから、グレースケールにしてきた。今回は見てほしいので、色を残した。とはいえ正確な写真じゃないから控え目。
はるか立ち絵登場。異常に気づいていく過程は楽しい。
アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」
※知らない顔、どころの差じゃない。
原作はリップの戸惑いを細かく書いているが、2022年の日本人にはピンとこない。驚きポイントを絞って、注釈をつける。「ああ、国が変わったのか」と気づいてもらえれば成功
歴史を紐解くと、こうした社会変革はちょこちょこある。日本で言えば明治維新とか、敗戦とか。私の人生はこれまで平穏だった。このまま平穏にゴールしたい。
アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」
※立ち絵は話すときは白い輪郭がつき、ちょっと背伸びする。表情、口パクは避けた。
アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」
※原作を読んでて、同じ名前の息子(リップJr.)が出てくるシーンは、「ぞわっ」とした。

エピローグ

小説はそのまま続くが、映像的におもしろくないのでナレーションで済ませる。どうでもいいわけじゃない。リップは新しい時代に順応して、ふつうに暮らすことができた。これこそ『リップ・ヴァン・ウィンクル』のおもしろいところ。
時間を不条理に奪われたが、不幸・悲惨・ミジメってわけじゃない
だから若者たちは「気楽になりたい」誘惑に駆られる。青年期とは、あくせく働き、人間関係に気を使い、希望と挫折が交錯する時代だから。
まぁ、リップはいいとこ50歳代だろうけど、1700年代なら人生の終末期。寿命が伸びた2020年代に置き換えると、7-80歳の老人の幸福をうらやむ感じかな。

青年時代に頑張らないと、老人になっても思い出がないだろうって? 私も以前はそう思っていたが、老人の幸福感は生理的なものだと思う。大したことをしてない人物でも、80歳まで生きれば脳内を幸福物質に満たせる。長く生きたご褒美だ。うらやましいと思わないのは、青春の証だろう。

解説パート

物語を楽しむための知識を掲載。人生の役に立つ知識じゃないがね。この動画を作ったことで、私の苦労が報われた。
アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」
※資料を作るのも大変。

雑記

9月に「ソフトウェアトーク朗読劇場祭」が開催されるので、その投稿作品としてストックしておく。しかし投稿しないと細かな点が気になって、ちょこちょこ修正してしまう。そのたびチェックをしてるけど、どこかにミスが残っているかもしれない。ま、投稿しちゃえば、どうにもならなくなるから気楽だ。


ストックしたまま次の動画を作った。


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