地下に吹く風

2004年 生活 日常
地下に吹く風

子供の頃は、「地下に吹く風」が不思議でならなかった。

地下鉄へ降りていく階段や、コンコース内では、決まって強い風が吹いている。大勢の人間によって呼吸された、生暖かい空気の動き。この風は、どこから吹いてくるのだろう?

地下鉄に降りていく階段では、地下から空気が吹き上げてくるように感じる。これは、どこの階段でも同じだった。
もし、地下から地上にどんどん空気が吹き出してしまえば、やがて地下は真空になってしまう。それはオカシイ。そうならないためには、どこかから地下に空気を送り込まなければならない。
私は、電車が地下に潜るところ、地下鉄のはじまりとなるトンネルが、空気の取り入れ口ではないか、と考えるようになった。トンネルから風が入り込み、地下鉄の路線内を吹き抜け、地上へと吹き出していくのだ。
そう考えると、なんとなくスジが通るように思えた。

しかし . . . と思う。
その動力は、どこから得ているのだろう?
それだけ大量の空気を吸い込んだり、吹き出したりするには、巨大な扇風機が必要になるだろう。電車が地下にもぐるとき、あるいは地上に出るときに、注意してみても、そんな扇風機は設置されていない。
では、どうして地下の空気は動くのだろうか?

そんなことを考えながら、子供の頃の私は地下鉄に乗っていた。
そう、その地下鉄こそが、空気を動かしているのだと気づいたのは、ずぅっと後になってからである。

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