逆襲の七輪

2004年 食べる 食べる
逆襲の七輪

──あの惨劇の夜から1週間。
今宵、ついに私はリベンジを果たした。

1週間前の日記は、やたらと興奮していて、どうして失敗したのか、なににショックを受けたのかが判然としない。
しかし細かく説明してもおもしろくないのでカットする。
とにかく私は失敗を見つめなおして、七輪を使うことに成功したのだ。

使うには使ったが、使いこなすには至っていない。

煙に注意

まず、煙を出すものはだめだ。つまり秋刀魚だ。
秋刀魚の脂で炭が燃焼し、薫製のように焼き上げる...というのは実現できなかった。
酢を塗ったのに、秋刀魚が網にくっついてしまうのも問題だった。

においに注意

ほか、エリンギやイカ、薩摩芋などを焼いたのだが、これも難しかった。
炭のにおいが強すぎるのだ。
それでも、エリンギやイカはまだいい。
薩摩芋はにおいがキツイ上に、うまく火が通らず、最悪の結果となってしまった(つまり、喰えないので捨てたということ)。

換気に注意

煙が出ないといっても、においは充満する。
サーキュレーターで喚起をしつつも、そのにおいが近所にいかないよう気を使った。それに、大丈夫だとは思いつつも、「火災報知器が鳴るかも?」という緊張感がずぅっと続いた。
このあたり、集合住宅ゆえの限界だろう。

鎮火に注意

後始末も大変だった。
先週と同じく火消し壷を使うわけだが、すべての炭を移せるわけじゃない。どうしても残りがでる。
七輪に水をかけるわけにはいかないから、自然鎮火するのを待つしかない。火事の危険は少ないとはいえ、そのまま寝てしまうこともできず、まんじりともせず夜を明かしてしまった。

置き場に注意

朝、七輪は冷え切ったが、今度は置き場に困った。
塵になった消し炭が風に舞ってしまうので、適当に置いておけなくなったのだ。
これはまだ考え中。いま七輪は私の足下にある。

ついでに書いておくと、火皿が割れてしまった。
割れるとは聞いていたが、ほんとに1回で割れるとは思わなかった。「割れる」と書いてあり、そのおりに「割れた」だけなのに、妙に感動がある。
知識が経験になったからだろう。

──七輪は本当に難しい。
家電製品のように、だれでも簡単に使えるわけじゃない。
むしろ、使う人によって成果は大きく変わるものだ。
熟練が必要なのだ。
だからこそ廃れて、どの家庭からも消え去ってしまったのだ。
私のようなトーシロに、ほいほい扱える品じゃぁない。

とりあえず先週のリベンジは果たしたが、これで終わりじゃない。
ここからはじまるのだ。
いつか七輪を、七輪のある暮らしを、私のものにしてみせる!

七輪よ、今日のところはこのくらいで勘弁してやろう。