見えざるハンディキャップ

2004年 社会 医療 日常
見えざるハンディキャップ

最近、歯医者に通っているのだが、イヤ~な患者がいる。

ソイツも、だいたい私と同じ時間に診療を受けている。30代後半とおぼしき男性で、髪もヒゲもモサモサで、太りすぎ。なにがウザイって、ソイツは次から次へと子どもっぽい要求やくだらないコメントを喋りつづけるのだ。

「うーん。この椅子は人間工学的にだめですね...」
「イタイイタイよ、イタイ気がする、イタくなりそう...」
「うがい用のコップください。タオル。それとね...」

となりで治療を受けている私の方が、「そのくらい我慢しろよ!」と怒鳴りたくなる。しかし医者や看護士は、男の要求すべてに、丁寧に、健気に、対応している。

──なぜか?
それは彼が身体障害者だからだ。

男は足が悪いらしく、車イスで通院している。待合室にはいつも母親とおぼしき女性がいて、彼を運び、彼を待ち、彼の世話をしている。なるほど、ハンディキャップがあることは明らかだ。手助けしてやるのが人の道というものだ。

だが! ここは歯医者だ!!!
むし歯になるのは、歯を磨いていないからだ。
足が悪いこととはなんの関係もないだろ!
まぁ、私に言えた義理ではないが、むし歯になったのは本人が自堕落な生活をしていたからだろう!

男は、身体障害者であることに甘えている。
みんなが無条件に、最大限の善意をもって接してくれると思いこんでいる。その傲慢さに腹が立つ。

障害者を叱るのは難しい。とりわけ、こ~ゆ~「うるさいヤツ」は危険だ。だから、甘やかす。黙って甘やかす。その方が周囲へのウケもいいし、面倒がなくていいのだ。

特別扱いされること。
これこそ、見えざるハンディキャップ(障害)ではないかと思う。