誰がために
2004年 哲学 仕事石ノ森章太郎は、じつに多くの作詞を手がけているが、なかでも『サイボーグ009(新)』の主題歌『誰(た)がために』は最高峰の1つだ。
誰(た)がために
吹きすさぶ風が よく似合う
九人の戦鬼と ひとのいう
だが我々は 愛のため
戦い忘れた ひとのため
涙で渡る 血の大河 夢みて走る 死の荒野
サイボーグ戦士 誰がために戦う
サイボーグ戦士 誰がために戦う
なにも見ずとも、歌詞を書けてしまう。そのくらい大好きなのだ。そして、あらためて意味を考えてほしい。
サイボーグ戦士たちは、誰のために戦っているのか?
自分たちを改造したブラックゴースト団への復讐じゃない。正義のためでも、賞賛のためでもない。守った人びとに理解されず、忌み嫌われても、なお戦い続ける。その孤高の姿に、心撃たれた。たまらなくカッコイイと思った。
月日は流れ、私はオトナになった。残念ながら、ヒーローにはなれなかったが、1つの会社が生まれた。ここが私の守るべきものとなり、戦う理由ともなった。遠い日の雷鳴のように、胸が熱くなった。
さらに6年が経過した。どうにも私は、ヒーローにはなれそうにない。
私は、自分を証明するために働いている。お金のためであり、賞賛のためだ。仕事を忘れた人のためには、働けない。働いてもいいけど、どれほど大変だったか伝えたくなる。血の大河だの、死の荒野だのを、ただでは渡れない。
自分のために働くのは、当たり前だと言われる。けれど、それだけじゃツライ。誰かのために働くこともできる。けれど、もっと理解されて、もっと愛されたい。それでいて、きちんと儲けたい! イヤなことはやりたくない! 楽しいことがしたい! 思いっきりラクがしたい! 休みもほしい!
こんな私でもヒーローになれるだろうか。
こんな私のまま、ヒーローになりたい。