賛成しろ
2004年 哲学 賛成か反対か「とりあえず賛成しておけ。」
そう、忠告されたことがある。
──あれは、高校時代の話だ。
友人Mが、恋愛の泥沼にはまって、駄目になっていた。
あまりにもヒドイので、私は忠告することにした。
別の友人Gが、これを制した。
G「やめておけ。聞き入れるはずがない。」
しかし私は無視して、Mに忠告した。
その結果、Mは怒り狂って、私を非難した。Mとの友情は消え去った。
まさにGの言うとおりだった。
G「ほらね。
忠告を聞き入れる理性がないからこそ、こんな状況になったんだ。
横から冷静な意見を述べたところで、なにも好転しない。」
ムカつくけど、反論できなかった。
親切心から行動した私は嫌われ、なにもしなかったGは好かれた。
これが現実だった。
◎
──その後の展開はさらに悲惨だった。
余計なことをした私は、くだらない話に巻き込まれていく。
一部始終を見ていた(見ているだけの)Gは、得意げに言った。
G「伊助よ。
おまえは率直にものを言いすぎる。
自分の考えと合わないなら、黙っていろ。
反対意見を述べるな。
正しいかどうか、誠意があるかどうかなんて関係ない。」
G「わかるヤツはわかるし、わからないヤツはわからない。
わかるヤツには、なにも言う必要はない。
わからないヤツには、なにを言っても無駄だ。」
G「とりあえず賛成しておけ。
結果、ソイツが崖から落ちようとも、それはソイツの自由だ。
他人の考えに、いちいち干渉すべきじゃない。」
……Gの意見には承伏できない。
Gの考えの根底には、徹底した個人主義がある。
(他人がどうなろうと、知ったコトじゃない……)
私は、そこまで周囲を無視できない。どうしても関わってしまう。
◎
ある日、私はGに訊ねた。
私「じゃあ、なんでオマエは私に忠告するんだ?
放っておけばいいんじゃないか。」
痛いところを突いたと思ったが、Gの答えは簡潔だった。
G「例外もあるさ」
──あれから17年。
今でもGとは意見が合わない。