オタクの道は……

2004年 娯楽
オタクの道は……

「伊助さんて、オタクなんですか?」

あけすけに質問されることがある。相手は明らかに、「オタクです」という答えを期待している。それ以外を認める気はないようだ。

返答に窮していると、相手が笑いながら言った。
「あはは、私もオタクですけどね~♪」
それを聞くと、今度は私がツッコミたくなる。
(おまえのどこが、オタクなんだよっ!!)

かつては私も、どっぷりオタクだった。
そして私の周囲には、同好の士がたくさんいた。
そこには、共通している価値観があった。

オタク = 人間のくず

なにも生産しない。ただ消費するだけ。
社会の責務より、自分の嗜好を優先してしまう。
大人として、恥ずかしい趣味をもつ少数派。

趣味について考えると、「誇り」と「恥」が入り混じる。
(悪いことはしてないが、このままじゃマズイかも……?)
(好きなものを好きといって、なにが悪いものか……!)
そんな自問自答を繰り返して、オタクたちは生きていた。

──しかしまぁ、世の中は変わったね。
アニメを見たり、フィギュアを集める趣味は、もはや多数派だ。
みんな気軽に「オタクだよ~ん♪」とカミングアウトしている。
あたかも、それが素晴らしいことであるかのように……

テレビで、秋葉原に徘徊するオタクたちを特集していた。
苦悩も覚悟もない。ただの馴れ合い集団。やたらと自分本位。
「おまえらはオタクじゃない。人間のくずだっ!」
と叫びたくなる。

私は、オタク世界の裏切り者である。
だから、適当なオタクは許せない。

「じゃ、伊助さんは、オタク研究家なんですね~♪」

……もう、どうにもならぬ。

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