毒見役

2005年 哲学 毒味役
毒見役

時代劇などで、「毒見役」という仕事が出てくる。
お殿様の食事を先んじて食べて、その安全性を確認する仕事だ。
ホントかどうかは知らないが、幼少のころからいろんな毒を食べて、「どんな毒にも気づく鋭敏さ」と「どんな毒にも耐え抜く身体」を身につけるらしい。
……なんとハードな仕事だろうか。

考えてみると、毒見役という仕事は難しい。
まず、毒に慣れすぎちゃいけない。
毒見役はケロリとしていても、殿様が死んじゃったら意味がない。
毒に気づかなければならない。

気づけなかった場合でも、毒によって死んではならない。
苦しむのはいい。
ケロリと平気だったり、あっち側にイッちゃうのは駄目だ。
手前で踏みとどまって、戻ってこなければならない。

戻ってきても、同じ仕事(苦しみ)が待っているだけ。
……なんとハードな仕事だろうか。

毒見役の家系に生まれてしまったら、どうするだろう?
まずは転職を考えるだろうけど、それが無理だったら?

……これはもう、毒を好きになるしかないよね。

毒と友だちになる。
毒を楽しみ、毒を喜ぶ。
「あっち側にイッちゃう寸前の、ギリギリの感覚がたまらないね!」
とかナントカ、言っちゃう人物になるわけだ。

こうなると、むしろ毒ジャンキーになるかもしれない。
「なんだよ、毒が入ってねぇよ!」
「この程度じゃ、イケねぇなぁ!」
「もっと強い毒くれぇー!」
とかナントカ、言っちゃう人物になるわけだ。

このレベルになると、毒見役の仕事も天職に思えてくるだろう。
誇りや生き甲斐を感じるようになるだろう。
すると、毒で苦しむ人たちを、理解できなくなるだろうな。
「毒を、毒だと思うからよくないんだ!」
「毒に打ち克つことで、未来が拓けるんだ!」
「どうして、だれも毒に挑戦しないんだ?」
とかナントカ、言っちゃう人物になるわけだ。

……気をつけよう。

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