浪漫泥棒
2005年 生活 スーパーにて 食事静岡ツアーの帰り、SAで土産を買うことにした。
土産といっても、自分たちで食べる土産だ。今回は食のポイントが少なかったため、「土地のものが食べたい欲求」が満たされなかった。その代償として、土産を買うことにしたわけだ。
──気になっていたのは、さくら海老だ。
道中、「駿河湾名産 さくら海老のかき揚げ」という看板を目にしつつも、食べずに通り過ぎていた。このままの気持ちで帰りたくないッ!
だが、そんなに美味しいものが夜のSAに売っているはずがなかった。
◎
私「釜揚げさくら海老だってさ、どう思う?」
妻「いまは、さくら海老の季節じゃない。」
私「さくら海老のはんぺんだって!」
妻「このあいだ食べた。実際はかまぼこ。」
私「わさびふりかけだ!」
妻「玄米には合わない。」
私「いちごジャムを買おうぜ!」
妻「こんなに食べきらない。腐らせるだけ。」
私「じゃ、この小さいサイズはどうだ?」
妻「石垣いちごのジャムじゃないよ。」
私「見ろよ! 牛乳ジャムだってさ。どんな味だろう?」
妻「コンデンスミルク。」
私「アワビの煮付けだよ、ほら!」
妻「東京で買った方が安い。」
私「にんにくたまご? 一度食べたらやみつきの味?」
妻「たまご1個あたり100円オーバー。」
妻の態度があまりにも冷たいので、逆に問うてみた。
私「じゃ、なにが食べたいんだ?」
妻「これ」
といって差し出してきたのは、かっぱえびせんだった。私は怒り狂って、むりやり数種の土産を買いあさった。
◎
……家に帰って、土産を食べる。私が買ってきたものは、どれも美味しくなかった。とりわえ、海老、しらす、わさびの3種せんべいは……ひどかった。こんなものに、680円もの大金を払った自分が許せなかった。
落ち込む私を尻目に、妻は、かっぱえびせんを食べている。
「えびせんは美味しいね♪」
私は叫んだ。
「ばかばかばか! おれの浪漫返せ! この浪漫泥棒!」