方円の器

2005年 哲学 物欲
方円の器

ずいぶん前の話だが、黒侠が車を買い換えた。
ホンダのインテグラから、マツダのアクセラという車になった。
私は車に詳しくないのだが、両者は性質が異なるらしい。
インテグラはかっ飛ばす車、アクセラはすらーり流す車......だとか?
よーわからん。

買い換えるとき、Yが言った。
「これで、ゆったり運転できますね」
どういう意味だろう? Yに訊ねてみた。

「つまり......インテグラはそーゆー車なんです。
 スピードを出したくなるし、スピードを出すために作られている。
 周囲もそう見るから、ちんたら走ると迷惑になる。
 だから、自然とスピードが出ちゃう

出ちゃう? 出ちゃうはナイだろ。
アクセルを踏むのは人間だろ? 車が踏ませているのか?

「でも、今度の車はアクセラだから、そこまで飛ばさなくてもいい。
 いや、飛ばしてもいいけど、飛ばすだけのスタイルじゃない。
 だから、いい気分で運転できるんです」

よーわからん。

水は方円の器に従う......という。
水そのものにカタチはなくて、入れられた容器に依る。
......人のココロも同じだ。
容姿や能力、所持金、地位や名声、周囲の接し方などで変質してしまう。

今回の例では、こうなる。
ドライバーの性格は、乗っている車に従う

ある意味、正しい。
軽自動車と4tトラックは、同じように運転できない。
混雑具合や路面状況などによっても変わる。当然のことだ。
だが......なにかがちがうような気もする。

車を買い換えると、運転スタイルが変わる。
運転スタイルを変えるために、車を買い換える。

車好きの人は、みんな、こんな考え方なんだろうか?