納得できない親子

2005年 社会
納得できない親子

──1月2日のこと。
深夜24時に、友だちとゲームセンターで落ち合うことになった。
私の方が先に着いたので、ゲーセン内を見てまわる。
久しぶりだった。数年ぶりになる。

正月三が日の深夜って、ゲーセンは混むものなのだろうか?
よくわからないが、そこそこ客が入っていた。
派手な電子音、コインの音などが飛び交う暗がりの中で、みんなが画面に夢中になっていた。

ぶらぶら歩いていると、階段の手すりから子どもが顔を出しているのが見えた。6歳くらいの男の子だ。
危なっかしいが、危険とは言えない程度に身を乗り出している。
(なんでこんな時間に子どもがいるんだッ!)
注意するため、私は階段を駈けのぼったが、2階につくと男の子は手すり遊びを止めてしまった。階段を駈けのぼってくるオヤジが珍しかったようだ。
男の子が手を振ってきたので、私も手を振りかえす。
いささか拍子抜けだが、まぁいい。

──男の子の両親は、すぐ近くにいた。
まだ若いカップルだった。コインゲームに熱中している。背後で、子どもがなにをしているかなど、まったく興味がないようだ。
ムカついた私はカップルに注意しようと思ったが……やめた。

……さらに昔。デパートで子どもを叱る親を見たことがある。
その父親は、泣きわめく子どもを本気でぶん殴っていた。なにがあったか知らないが、理由を説明したり、諭したりする様子はなく、ただ殴っていた。母親も止めようとしない。
(どれほどの悪事を働けば、あぁも殴られるのだろう)
よくわからないまま、その親子は去っていった。

(あの子は……どうなるんだろう……)
わけもわからず殴られれば、子どもは善悪ではなく、殴られる条件を判断するようになる。つまり、隠れてやればいい、見つからなければOKと覚えてしまう。そして、殴ってこない相手を馬鹿にするようになる……らしい。

あれこれ考えると、さらに気分が悪くなってきた。
私はゲーセンを出て、駐車場に停めてある車の中で待つことにした。
やがて、ゲーセンの灯りが消えて、最後の客たちが出てきた。

……あの親子がいた。
偶然にも、彼らの車は、私の車のとなりに停めてあった。
派手な内装の、ピンク色のワゴンである。
母親が、後部座席に子どもを押し込む。ガーッとドアが閉まると、窓から男の子が顔を出した。私と目があったが、私を識別できていないようだ。
ビー玉のような瞳が私を見つめている
私は小さく、男の子に手を振った。

ワゴン車は走り出し、夜の闇に消えていった。
あの子にふたたび会うことはないだろう。なんの関係もない親子だ。
しかし……どうにも……納得できないこの気持ちは、なんなのだ!?

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