新・悪魔との取引

2005年 哲学
新・悪魔との取引

──想像してみよう。

TFTモニタから悪魔が出てきて、あなたにこう囁いた。
《もし高校時代に戻れたら、おまえは違う人生を歩むか?》
あなたはどう答えるだろう。

「若いうちに、もっと身体を鍛えておけばよかった」
「あんなに時間があったのだから、留学すればよかった」
「もっと情熱的に恋すればよかった」
「もっと○×しておけば……あのとき□△を選んでいれば……」

そんな思いが頭をよぎったのではないだろうか。


──さらに想像してみよう。
あなたは60歳で定年を向かえた。
どんな60歳になっているかは、だいたい想像がつくだろう。多少のトラブルはあったものの、いま予想しているとおりの人生を送れたとする。
そんなある日、プラズマモニタから悪魔が出てきて、こう囁いた。
《もし34歳に戻れたら、おまえは違う人生を歩むか?》


──もっと想像してみよう。
あなたは90歳で寿命を向かえた。
定年してから30年間、ひたすら遊びほうけた。いまは身体の自由も利かず、日にちの感覚もわからない。あとは、静かに眠るだけ。
そんなある日、三次元モニタから悪魔が出てきて、こう囁いた。
《もし34歳に戻れたら、おまえは違う人生を歩むか?》


……そして、悪魔が言った。


「もし、あのとき、こうしていたらと思うなら、その願いを叶えてやろう。
 時間を巻き戻して、やりなおすチャンスを与えてやろう。

 与えるのはチャンスだけだ。成功の保証はない。
 当時の人間関係や人生設計を大切にしても、同じ結果は出せない。
 それらをぶち壊して、違う人生を作るのだ。

 目を閉じて、3つ数えろ。
 目を開けたとき、おまえは34歳に戻っている……」

はっと目を開ける。
カレンダーを見ると、2005年4月1日に戻っていた。
──悪魔の声が聞こえる。

どうするかは……おまえ次第だ!

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