いきなりプリン
2005年 生活先日、友だちと寿司屋に行った。といっても回転寿司だけどね。
寿司を食いながら、友だちがこんな話をした。
「バイト連中を連れて、寿司屋に行くことがあるんだ。おれのオゴリで。
その中に、いきなりプリンから注文する女の子がいるんだ。
別に緊張しているわけでも、高いものを控えているわけでもない。
寿司がキライというわけでもないようだ。
プリンが大好きだから、食前、食中、食後に注文する。
何回行っても、必ずプリンから食べ始めるんだ……」
──寿司屋に入って、いきなりプリンを注文する。
たしかに、妙な違和感がある。
味の淡白なもの(タイやヒラメなど)からはじめて、だんだんと味の濃厚なもの(トロ、ウニなど)にしていき、最後にさっぱりと口を整える(巻き寿司など)。また、合間にはお茶やガリを挟んで、味覚を鋭敏にする……というのがセオリーだ。
だがしかし、そこまで守れとは言わない。
回転寿司なのだから、なにを、どう注文しようと個人の自由だ。
プリン、カッパ巻き、プリン、卵焼きと食べて、なにが悪い?
食べ方に指導が入るのなら、オゴられたくもない。
……だがしかし、オゴる側の気持ちもある。
たかが回転寿司とはいえ、美味しいものを食べてほしい。とはいえ、
「寿司の喰い方はそーじゃねーだろッ!
こーやって喰った方がうまいんだよッ!」
と、説教するわけにはいかない。
※説教して効果があるかどうかも疑問だが。
親睦が目的だから、その子だけ除け者にもできない。
そしてまた、プリンが注文される。
なんともはや、オゴり甲斐のない話である。
◎
そんな話を聞きながら、私は考えていた。
(回転寿司のプリンは、そんなに美味しいのだろうか?)
試してみようかと思ったが……やめた。
プリンの美味しさは認めるが、食前に注文したくはない。
寿司屋に入るとき、頭の中にあるのは寿司だけだ。