勇気と狂気

2005年 哲学
勇気と狂気
殺し屋に追いつめられて、意を決して崖から飛び降りる。

勇気ある行動に見えるが、実際には、ほかに選択肢がないだけだ。結果は単なる運であり、当人の実力とも関係ない。
やるしかない状況でやるのは当然だ。勇気でもなんでもない。

──本当の勇気とはなんだろうか?

今のままでも問題ない。差し迫った危険もない。
崖の下がどうなっているかわからない。準備もできてない。

こんな状況で飛び降りるなんて、賢い人間のやることではない。
……そういう人ほど、追いつめられる。賢いはずなのにね。

転職にたとえるとわかりやすい。
あれこれ不満をいうくせに出て行かない。条件が揃っていないという。給料が半分になったら、上司が一線を越えたら、部下と喧嘩したら、家族がいなくなったら……あるいは倒産したら転職する?
──それじゃ遅いよッ!!

学校のテストは、日取りや範囲を教えられ、準備ができる。しかしリアルな人生では、いつだって唐突に本番がやってくる。
「まだ、そんな準備ができていないよ!」
「リスクを犯すだけのリターンがないね」
「まずは様子を見よう。慎重に判断するんだ。」
賢い人ほどチャンスを失っていくのは滑稽ですらある

仮に、準備万端で本番を迎えられたとしよう。
100%のパワーで挑戦した人は、もっと危険な状態になる。
成功すれば、次も準備する余裕がもらえると思いこんでしまう。
失敗すれば、100% 言い訳できないので、100% 打ち砕かれるだろう。

リアルな人生では、いつだって唐突に本番がやってくる。
いや、それが本番であるかどうかも不明なまま、一瞬で通り過ぎてしまう。リスクもリターンもわからない状況で、決断しなければならない。

  それをチャンスだと決めつけて、
  準備もできていないのに飛び込んでいく狂気!

そんなクレイジーな人たちが成功していくのだ。

設立して2年目に、私はチャンスを拾った。
それは、のちに大きな利益を生み出した。

あのときの勇気(狂気)が、今は足りていない。

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