自信と過信

2005年 哲学
自信と過信

未来のことは、誰にもわからない。似たようなことはあっても、同じことは発生しない。だから、自信をもって約束できることなんかない。
……それでも、やらなきゃならないときがある。

引き受けたはいいが、有効な策を思いつかない。
(どどど、どうしよう? どどど、どうなるの?)
めちゃめちゃ不安になる。
だが、みんな(従業員や取引先)に気づかれてはならない
不安が伝染すれば、なにもかもが終わりになる。

「まかせておけ♪」
そう言って、片目をつむる私。
いかにも策があるかのように振る舞うが、なんにもない。内心はドキドキハラハラ。眠れない夜がつづく。頭をフル回転させるが、なにも出てこない。破滅の刻が、ぐんぐん迫ってくる。

(もう駄目だぁ!)
万策尽きて、もう片方の目もつむろうとしたとき、奇跡が起こる。
まったく予想していなかったトラブルだ。
坂道を降りてきた大型トラックが、横から飛び出してきたジャンボジェットに跳ね飛ばされるようなもんだ。わけがわからない大混乱!

こうなると、反射で行動できる。
「ちっ! せっかくの策が無駄になっちまったぜ!」
舌打ちして、炎の中に飛び込んでいく。身体を固定されて蝋燭であぶられるより、混乱した火事場の方が救いがある。
こんなケースは、決して珍しくない。

やがて……馴れてくる。
感覚がマヒして、ピンチなのに頭がまわらなくなる。
(どうせまた予想外のことが起こって、なんとかなるさ……)
目の前に大型トラックが迫っているのに、お茶をすすってしまう。

「なんとかなる」じゃなくて、「なんとかする」んだろ?
最後まであきらめずに考え抜いたからこそ、土壇場で動けるんじゃないか。暗がりでも、目は開けておけよ。

それはわかってるんだけど……

「まかせておけ♪」
そう言って、片目をつむる私。
それは本心なのか、演技なのか? 何割くらい自信があるのか?
自分でもわからなくなってきた

敵をあざむくには、まず味方から。
他人をあざむくには、まず自分から。

自信なのか、過信なのか……もう誰にもわからない。

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