効果的な手法
2005年 政治・経済 政治ときおり街で見かける街宣車。
真っ黒なバスに大型スピーカーを取り付けて、大音量で軍歌を流したり、恫喝のような主義主張を叫んでいるアレだ。主義主張を語り合うのが好きな私でも、アレは迷惑だと思う。
「あんなことをして、プラスの効果はあるのだろうか?」
彼らの手法は、とても効果的とは思えない。
「アレはね、わざとやってるんだよ」
と、X先輩は言った。
「?」
私には、その言葉の意味がわからなかった。
「あーゆーのを見るとさ、
政治について語ることに嫌悪感を抱くようになるだろ。
政治について語る人には近づかない。
自分も語らない。興味も示さず、無関係でいようとする。
アレはさ、それが狙いでやってるパフォーマンスなんだよ。」
「えぇ!?」
私は驚きを隠せなかった。
「あの人たちの叫んでいるテーマはすごく重要だ。
だけど、そこに注目してほしくない人たちもいる。
国民が無関心になってほしいと思う勢力もある。
そういう人たちが出資して、アレをやらせている。
だからアレは、とても効果的な手法なんだよ。」
荒唐無稽な話だが、妙に説得力があった。
たしかに、“政治活動に嫌悪感を抱かせること"が目的なら、ひどく納得できる。
声高に叫ぶことで、逆に注意をそらしていたのか!
私は先輩に詰め寄った。
「そ、それって本当なんですか? 根拠はありますか?」
先輩はしれっと答えた。
「ないよ。」
「ない? それじゃ、誹謗中傷じゃないですか!」
「そうだよ。アレと同じだ。」
そう言って、先輩は街宣車を指さした。
X先輩の話は、いつもギリギリなのでおもしろい。