STAND ALONE COMPLEX
2005年 哲学 孤独私は......コミュニケーションが苦手だ。
協調性がない、とも言い換えられる。
リアルな「私」を知っている人なら、大きくうなずくだろう。
私は踏み込みすぎるし、躊躇しすぎる。他人と衝突することも少なくない。それも軽い衝突じゃなく、交通事故のように致命的な衝突ばかりだ。
だから、ずっと独りでやってきた。
独りが好きなのではなく、結果として独りになってしまうのだ。
仕事上でも衝突が多かった私は、生き残るためにスキルを高めた。
しかしスキルを高めれば高めるほど、私は独りで働くようになっていった。
独りで企画して、設計して、制作して、納品する。
独りであることはとても気楽で、自由だった。ほかのスタッフとも衝突しないから、私にとっても、会社にとっても都合がよかった。
それでも私は、「みんなでやる仕事」にあこがれていた。
みんなで考えて、みんなで協力して、みんなで成功させる。喜びを分かち合い、悲しみを笑いに変える。
「みんなでやる仕事」は、とても楽しそうだった。
井戸の底から見上げる空の青さのように、まぶしかった。
だから、私は会社を興した。
それしか手がなかった。他人のルールに従えないなら、自分でルールを作るしかないからだ。
ワンマン社員は、ヒラ社長になった。
◎
それで......どうなったのか?
どうにもなってないよ。
ただ、わかったことがある。
「独りで仕事をしている」なんてことは、ありえない。
実際には「みんなで仕事をしているのに、独りで仕事をしている」と錯覚しているだけだ。孤独とは、物理的な状況ではなく、当人の主観が決めるもの。一種の幻想と言ってもいい。
当人が孤独だと思えば、どんな状況でも孤独になってしまう。
逆もまたしかり。
世の中に不満があるなら自分を変えろ。
それが嫌なら耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らせ。
それも嫌なら......草薙素子『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』より