身につく学習法

2005年 娯楽 カメラ
身につく学習法

「本で読んだだけの知識は、身につかない」と人は言う。
まったくもってそのとおりだ。
カメラをやってると痛感する。

たとえば「このダイヤルを回すと、こういう効果が出る」と知っていても、撮影の現場では思い出せない。緊張しているわけでも、焦っているわけでもないのに、覚えたはずの知識が出てこないのだ。ファインダーをのぞくと、視野狭窄になるのかもしれない。
──その最たる例をご紹介しよう。

初夏の夜、私は新宿都庁に夜景を撮影しに行った
撮影中、困ったことに遭遇。縦長のビルを根っこから撮りたいのに、どうやってもフレームに収まらないのだ。

(画角が狭いんだな。
 もう少し広角なレンズ……12mmくらいあれば撮影できるのに。)

レンズが足りないんじゃ、仕方がない。
私はあきらめ、帰ってきた。
その後、家でどんなレンズが必要だったかを調べてみる。
すると、とある雑誌にイメージどおりの写真が掲載されていた。同じ時間帯に、同じ場所から、同じものを撮影した写真。しかも、ビルが根っこから写っている。
(まさしく、こんな写真を撮りたかったんだ!)

で、レンズ情報を見てみると、私のものより画角が狭い。
なんで? わけがわからない。私のレンズより画角が狭いのに、なんで広い範囲が撮れてんの?

──そのとき、私は気づいた。
「カ、カメラを縦にしている!」

カメラを縦にかまえれば、より縦長のものが撮影できる。
それだけの工夫だった(工夫ですらない)。
つまり、手持ちのレンズで撮影できたのだ。気づいてさえいれば……。
足りなかったのはレンズじゃなかった!!

あっはっは。
私を阿呆と笑うがいい。そのとおりだ。
だがね、実際の撮影現場では、こんな簡単なことも思いつかない。
なぜだか頭がまわらないのだ。

だから1つずつ、意識的に試していくしかない。
実際に試したことは、次の機会でも思い出せるから。

しかし試すと言っても、本番では思い出せないから、出かける前に「今日はなにを試すか」考えておく必要がある。たとえば、「今日はこのボタンを使うぞ」というように。まんぜんと出かけても、同じことを繰り返すだけ。ちっとも先に進めない。

想像していたより、カメラはずっと難しい。
そしてその分、ずっと楽しい。