それはなに?
2005年 哲学 社会■「それはなに?」
○「これは、***というものです。
アフリカの貧困を救うためにつけてるんですよ」
■「へぇ」
○「知ってますか? わずか数円のワクチンが買えなくて、
多くの子どもたちが死んでいるんですよ」
■「多くのって、どのくらい?
ワクチンがあるのに買えないの? ワクチンが足りないの?」
○「……詳しいことはともかく、ほっとけないですよね!」
■「募金活動ってわけか。赤い羽みたいなものだね」
○「いえ、募金とは、ちょっとちがうんです」
■「じゃ、なんなの?」
○「直接送金はしないんです」
■「なんで? わずか数円でいのちを救えるんだろ?」
○「それじゃ場当たり的な解決にしかならないので、
政府を動かすんです」
■「募金じゃなくて、政治活動への献金というわけか?
だとしても、政府はもう活動してるだろ。
ODAじゃ足りないのか? どこが足りないんだ?」
○「……詳しいことはともかく……
飢えた人にパンを渡すだけじゃ駄目なんです!
パン工場を建ててあげるんです!」
■「どうして? その土地にはその土地のやり方があるだろ?
工業文明を押しつけると、その土地にあった生産手段が失われる。
ODAでも問題になったじゃないか」
○「だから、そういう問題のない支援をするんです」
■「どうやって? それを身につけると、なにが変わるの?」
○「意識ですよ。これは啓蒙活動なんです」
■「どんな考えを広めようとしているの?
読んでおくべき本とか、ふだん気をつけることはある?
各自が考えるだけで、貧困は救えるの?」
○「……」
■「?」
○「本気にならないでくださいよ。キモチの問題ですから」
■「……本気じゃなかったのか……」