永久保存の罠

2005年 娯楽 メディア規格
永久保存の罠

DVDやムックなんかで、「永久保存版」という表記を見かける。美麗な装丁に、豊富な特典、そしてゴージャスな価格。自宅の金庫に保管して、子どもや孫にも見せてあげよう!
……そんなわけ、ねぇじゃん。

「新しいのに買い換えるから、古いのをあげるよ♪」
21歳のころ、友だちからLDデッキをもらった。もらい乞食の私は、わーいと喜んで持ち帰った。LDデッキは、友だちから借りたLDの再生マシンとして重宝した。

私はLDを買わなかった
お金もなかったし、いつか規格が古くなることを予見していたからだ。

中学生のころ、なけなしの小遣いを貯めてレコードを買った。とても大切にしていたのに、世の中はCDに移行してしまった。あの悔しさ、悲しさを味わうのは、もうたくさんだ。
「永久保存版」なんて、うそっぱちだ!

そうなのだ。私はわかっていた。
わかっていたはずなのに……なぜ、買ってしまったのか?

……めちゃめちゃ大好きな映像作品たち。
何度も何度も再生して、ついにビデオテープがすり切れてしまった。私は高い金を払って、LDを買った。「永久保存版」として……。
おかげで、LDデッキも捨てることができなくなった

気がつけば、十年の歳月が流れていた。
気がつけば、より安く、より小さく、より充実した内容のDVDボックスが販売されている。一度も再生されることがなかった「永久保存版」たち。彼らをそのまま捨てるわけにはいかない。私はせめて、HDDレコーダーに録画してやることにした。

……LDデッキが壊れてて、音が出ないよ……

もう! もう2度と! もう絶対に!
「永久保存版」は買わない!!