メイド喫茶の作法

2005年 娯楽
メイド喫茶の作法

──1年ちょい前、友人に誘われてメイド喫茶に行った。
なかなか1人では行けないところので、ちょうどよかった。
はやる気持ちを抑えながら、私は友人についていった。

その店は、秋葉原の外れにあった。
雑居ビルの2Fをむりやりファンシーに改造したような店で、学園祭の喫茶店を彷彿させた。当時は今ほどメイド喫茶も騒がれていなかったし、この店もスタートしたばかりだったようだった。

「いらっしゃいませ~♪」とメイドさんたちが一斉にかしずく。
「あ、どうも」と、私は答えた。
どう答えるのがふつうなんだろう?

案内された席に着く。メニューを見る。どれも高くて、小さくて、簡単なものばかり。まさしく学園祭のメニューだ。
適当に注文した品を、メイドさんが持ってきて、またカウンターに戻っていく。ちゅーっとコーラをすする。ふつうのコーラだった。
……うむむ。

私は友人に尋ねた。
「メイド喫茶って、なにするところ?」
「メイドを愛でるところですよ。」
「でも、こっちに来ないよ。おしゃべりとかしないの?」
「キャバクラじゃないので。」
「お触りも禁止?」
「そーゆーのは風俗でやってください。」
「風俗にメイドさんはいないでしょ?」
「なら、イメクラにどうぞ。」
「……写真は? 撮ってもいい?」
「ここは駄目みたいです。」
「じゃ、ナニをすればいいの?」
「ナニもしないでください。」
「……うむむ。」

「あんまりジロジロ見ないでください。」
「え、見るのも駄目なの?」
「横目でちらちら見るのがいいんです。」
「……それで、目があったら手を振ってもいい?」
「目をそらしてください。」

メイド喫茶は、とても難しいところだった

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