うそと社長業
2006年 政治・経済 考え事思うに、うそと社長業は切っても切れない関係にあるようだ。
ここに小さな箱がある。
箱の中身はだれにもわからない。そこで社長が宣言する。この箱には○×が入っていると。この与太話を信じる人が多ければ、それは現実になる。みんなが「こうなる」と思ったことは、たいてい「そうなる」からだ。
しかし社長は、箱の中身を知っていたわけじゃない。
というか、社長が宣言した時点では箱の中身は空っぽだった。社長はそれを知りつつも「うそ」をつく。
未来はこうなる。だから力を貸してくれ。
未来はだれにもわからない。真剣に考えたらノイローゼになってしまう。そこで不安から目をそらし、潜在力を引き出すものが必要になる。それは「夢」かもしれないし、「希望的観測」かもしれない。あるいは……「うそ」かもしれない。
しかし、そうしたものなしに生きていくのは難しい。
◎
「社長、私はこの仕事に向いていません。もう駄目です」
「そんなことはない。きみには適性がある。ワクワクするような仕事もあるぞ」
もちろん、うそだ。
未来のことも、他人のことも、私にわかるわけがない。
予測を裏付ける根拠は、なんにもない。
それでも断言する。
未来はこうなる。だから力を貸してくれ。
みんなが信じれば、それは現実になる。