移り変わる世界

2006年 政治・経済 仕事
移り変わる世界

地下鉄の乗り換え口で、自動改札機を修理している人を見かけた。

パネルを開け、複雑な機構部分をチェックしている。
女性で、けっこう若い。20代だろうか?
乗客が洪水のように流れていく中で、橋桁を修理しているように見えた。
(へぇ、若いのに技術があるんだな……)
と、私は感心した。

次の電車に乗って、ふと気がついた。
「そういや、来年3月からPASMO(パスモ)に切り替わるな」

パスネットからPASMOへ

私が日ごろ利用している営団線や東京メトロは、パスネット規格の磁気カードが採用されている。使いはじめたころは違和感もあったが、2枚同時挿入による精算機能などの改良が重ねられ、けっこう便利なインフラとして定着した。
反面、機構部分は複雑になってしまったのか、電車に乗るといつもどこかで改札機が故障しているのを見かけた。
彼女のような技術者は、その対応に負われる毎日なのだろう

こうしたパスネットシステムが、PASMO(パスモ)に切り替わる。

PASMO(パスモ)とは、Suica(スイカ)と同じく非接触型の磁気カード。電子マネー機能を持ち、Suicaとの相互利用も可能となる。非接触になれば駆動回路が減るので、今のような故障はぐっと減ることだろう。
すると、彼女のような技術者はどうなるんだろう?

パスネットが導入されたのは2000年。
わずか7年で、覚えた技術が無意味になってしまうのか
そりゃ、引き継げる部分はあるだろうけど、あまりにも短い。それに訓練して新しい技術を覚えたところで、また数年後には別の世界に変わってしまう。

なんだか虚しい気がする。

しかし私も他人を憐れんでいられるほど悠長な立場じゃない。

私が棲む情報技術の世界も移り変わりが早い。
新しい技術は次々と発表され、覚えた技術は次々と無効になっていく。特定のスキルに秀でたところで、アドバンテージを得られるのは1年ちょっとしかない。つねに勉強しなければならないのだ

そんな変化の早さを、むしろ気に入っているからこそ、私はここにいる。
それに勉強することも……今のところ、きらいじゃない。

(彼女も同じかもしれない。みんな同じかもしれない……)

電車に揺られながら、そう思ってみた。