カウンターの向こうのカップル
2007年 生活 日常新橋で取引先と飲んでいたときの話。
私たちはカウンター席に座り、仕事の話をしていると、肩越しに若いカップルが見えた。L字型のカウンターの向こうで、キスしあっている。
食事をあーんして、ちゅー♪
お酒を飲んで、ちゅー♪
ちゅーして、あーん♪
きゃはは、うふふ♪
ちゅちゅちゅ、ちゅぅぅ~♪
ところかまわずキスしたくなる気持ちはわかる。若い頃はみんなそうだ。だがな、やるなら店の奥でこっそりやれよ。スポットライトに照らされたカウンター席で、目の前に板前さんがいるのに、よくキスできるな。
食事とキスを交互にできる神経にも驚かされる。
ここは深夜3時のバーじゃない。平日9時過ぎの居酒屋だ。店内は仕事帰りの中年サラリーマンでごった返している。満席だ。そんな状況なのだが、愛し合う2人には見えていないようだった。
むちゅちゅー♪
私も、そんなカップルを見たいわけではない。
しかし取引先の肩越しに、どうしても見えてしまうのだ。
やむなくビールを飲んで間を空けるが、目を戻すとまだキスしている。長いよ、おまえら。
「店員さん、あいつらを個室に案内してやってよ」
心の中で、何度かつぶやいた。